コールセンターAIの現在地~AIが一次対応を担う「コールセンター4.0」と、最初の一歩~

「応答率を上げたいが、人が採れない」「採用しても定着せず、スーパーバイザー(SV ※コールセンターにおいて現場オペレーターを直接監督・指導する管理職を指す)がフォローに追われている」。
人手を前提にしたまま応答率を追いかける運営は、もう限界を迎えています。
そして、AIが電話の一次対応そのものを担える水準に到達したことで、コールセンターの構造は「人が対応し、AIが支援する」から「AIが対応し、人が支える」へ反転しつつあります。
本記事では、コールセンターAIの現在地を整理。まず構造的な課題を数字で確認し、次にAIがどこまで電話に出られるのかを実装事例で示し、最後に自社が踏み出すべき最初の一歩までをお伝えします。
目次
監修者

株式会社AVILEN
代表取締役 / データサイエンティスト
創業メンバーとしてAVILENに参画し、2021年から代表取締役に。 2023年にAVILENを東証グロースに上場。 東京大学大学院を修了し、機械学習による即時的な津波高予測の研究に従事。 金融データ活用推進協会標準化委員。
なぜ「人手前提のコールセンター」は限界を迎えたのか
顧客が最も不満を感じているのは「つながらないこと」
まず押さえておきたいのは、顧客体験(CX)の重要性が年々高まっているという事実です。
機能や価格だけで差別化することが難しくなった今、サービスを通じて得られる体験そのものが差別化要因になっています。
そして電話窓口は、その体験を左右する数少ない直接接点です。
Zendeskがまとめた顧客体験に関する統計(※)では、一度でも顧客体験に満足できなかった場合、顧客の52%が競合他社に乗り換えると報告されています。
※出典|Zendesk「35 customer experience statistics to know for 2026」(2026年3月5日更新)
では、コールセンターにおいて顧客は何に不満を持つのか。
上位に来るのは、応対の丁寧さではありません。
「電話がつながるまでの待ち時間が長い」「話し中でつながらない」。つまり、応対品質を評価される以前の、サービスレベルの問題です。
しかもその不満の多くは、苦情として企業に届きません。黙って離れていくだけなのです。
採用に苦労する企業82.1%、平均放棄呼率12.2%という構造
現場の数字は、この課題が個社の努力不足ではなく構造的なものであることを示しています。
一般社団法人日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年6〜7月に実施した実態調査(※)では、回答したBPO事業者68社のうち82.1%が採用活動に苦労していると答えました。
※出典|日本コンタクトセンター協会(CCAJ)『2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査』(採用活動の状況、経営課題の優先度)
また、オペレーターの採用時給は上昇が止まらず、2025年の調査(※)ではついに全国平均が1500円台に達しました。
関東では最高3000円の募集案件も確認されており、「時給1500円」ではもはや求職者に選ばれない水準です。
労働人口が減り続ける以上、この傾向が反転することはありません。人を集めて対応するモデルそのものが、コスト面から立ち行かなくなっています。
※出典|月刊コールセンタージャパン「全国採用時 時給・月給調査2025」(採用時給)
この採用難は、経営課題の優先順位にそのまま表れています。
同じCCAJ調査では、「AI活用による自動化対応・セルフサービス化の推進」を優先度の高い課題に挙げた企業が63社(92.6%)にのぼりました。
情報セキュリティ強化、DXを通じた効率化に次ぐ位置づけです。
その一方で、優先度上位5項目のうち最も着手が進んでいないのも、このAI活用でした。
採用で埋められない以上、1人あたりの対応件数を増やすか、呼量そのものを減らすしかない。
答えはAIだと分かっていながら、動き出せていない企業が多いということです。
サービスレベルも低下し続けています。
事業会社のセンターを対象とした『コールセンター白書2025』(リックテレコム)によれば、市場の平均放棄呼(オペレーターに繋がる前に切断されてしまったコール)率は12.2%で、3年連続の悪化です。かかってきた電話のおよそ8件に1件が、オペレーターにつながる前に切れている計算になります。
多くの企業がCX向上のために応答率や呼損率をKPIに置きながら、そのKPIを達成できていない。
しかもその差は、埋まるどころか年々広がっているのが実情です。
SVがフォローに追われ、複利の効く仕事に手が回らない
オペレーターの時間は、通話そのものより周辺業務に食われています。
通話後の記録・後処理、CRMへの入力、確認のための保留。1件あたり数分の積み重ねが、対応できる件数の上限を決めています。
人を増やさずに件数だけを伸ばそうとしても、どこかで必ず頭打ちになります。
この後処理を圧縮しようと、多くの企業が需要予測によるシフト最適化を含めた施策に取り組んできました。
しかし、細かな施策の積み重ねで稼働率を上げる方法はすぐに限界が来ます。ROIを出しにくいうえ、リターンが頭打ちになるからです。
実際、需要予測AIを入れても、コールの変動が大きいセンターでは予測と実績の乖離が大きく、期待した効果を得られないケースが少なくありません。
AIも使いどころを間違えれば効果は限定的です。
さらに深刻なのがSV層です。前述のCCAJ調査では、人員が「不足している」「やや不足している」と答えた企業の割合は、このSV層が87.9%で最も高く、コミュニケーター・オペレーター(72.7%)を上回りました。どの職種でも「過剰気味」と答えた企業はゼロです。
そのSVは、離職率の高いオペレーターのフォローと指導に大半の時間を取られ、本来やるべき業務改善、運営企画、FAQやナレッジの整備といった「やるほど効いてくる、複利の効く仕事」に手が回っていません。
人が辞めるからフォローに追われ、フォローに追われるから品質が上がらず、品質が上がらないから人が疲弊する。この負のスパイラルを、現場は気力で維持している状態です
AVILENが最大の課題と捉えているのは、まさにこの部分です。
本来はCXの設計に集中すべき人たちが、「電話に出る」という当たり前を維持するために消耗している。人に依存したプロセスを変えない限り、この構造は解けません。
IVR・チャットボット・オペレーター支援の次に来るもの
「コールセンター1.0から3.0」が越えられなかった壁
コールセンターの効率化は、これまでも進化を重ねてきました。AVILENでは、これを4つの世代で整理しています。

1990年代以降のコールセンター1.0は、IVR(自動音声応答)の浸透です。
音声ガイダンスで担当窓口に振り分ける仕組みですが、柔軟性が低く、複雑な用件は結局オペレーターが対応することになりました。
「〇〇の方は1を」という階層をいくつも辿らされる体験は、待ち時間への不満をむしろ増やしてきました。
2010年代のコールセンター2.0は、チャットボットの浸透です。
入電そのものを減らす狙いでしたが、シナリオやQ&Aを作り込む工数が重いわりに、解決率が上がらないという課題が残りました。
2020年代のコールセンター3.0は、オペレーターのAI支援です。
通話中の文字起こしやFAQ検索の補助で生産性を上げるアプローチで、一定の効果はありました。
ただし人手は依然として必要で、コスト削減の幅も限定的です。
3世代に共通するのは、「人が対応する」という前提を変えなかったことです。だからこそ、改善の上限が最初から決まっていました。
コールセンター4.0は、AIが主役で人がサポートに回る
いま起きているのがコールセンター4.0、AI音声応答による自動化です。
複雑な問い合わせを含めて、AIが一次対応を完結させる。人がAIに支援されるのではなく、AIを人がサポートする体制へと、主従が入れ替わります。
これは構想段階の話ではありません。CCAJ調査で生成AIを活用していると答えた55社のうち、49.1%が「ボイスボットによる自動化対応」に使っていると回答しています。
電話をAIに出させることは、すでに現場の選択肢に入っています。
またGartnerは2025年3月、2029年までにエージェンティックAIが一般的な問い合わせの80%を人の介在なしに自律的に解決し、運用コストを30%削減すると予測しました(※)。
同社はAIエージェントを、顧客サービスを「自律的で、顧客の労力がかからない体験」へと転換させるゲームチェンジャーと位置づけ、企業には受電対応のマネジメント方法そのものを見直す必要があると指摘しています。
※出典|Gartner「Gartner Predicts Agentic AI Will Autonomously Resolve 80% of Common Customer Service Issues Without Human Intervention by 2029」(2025年3月5日プレスリリース)
何が変わったのか|シナリオ設計からの脱却と、応答速度
技術的なブレークスルーは2つあります。
1つ目は、Q&Aやシナリオを作り込まなくても対応できるようになったことです。
従来のボイスボットはルールベースで、想定した問いと回答を大量に用意し、そこに寄せて答える仕組みでした。
そのため想定外に弱く、運用も重かった。生成AIを使った音声対話では、マニュアルや業務情報を読み込ませておけば、フルネームを尋ねたのに名字だけ返ってきた、和暦で答えられた、といった揺らぎにもその場で対応できます。追加の質問を能動的に投げて、用件を特定していくこともできます。
2つ目は、応答速度です。
音声AIが使われない最大の理由は、待たされることでした。
一般的な処理は、音声認識、知識検索、回答生成、音声合成を直列に実行するため、ユーザーが話し終えてから声が返るまでに間が空きます。人間はこの沈黙を待てません。
AVILENグループでは、発話の途中から関連知識の検索を始め、回答を生成しながら音声を作るという複層処理によって、人と同等かそれ以上の速さで応答する仕組みを実装しています。
AIエージェントが得意なのは、大量の処理を一貫した品質でスケールさせることです。問い合わせ対応は、その効果が最も大きく出る領域のひとつです。
【関連記事】バックオフィス業務におけるAIエージェント活用 ― よくある疑問と専門家の見解
コールセンターAIはどこまで電話に出られるのか|4つの実装例
ここからは、AVILENグループが実際に支援した事例をご紹介します。
※各事例は掲載企業・団体のご負担に配慮し、一部の社名/団体名を業界別の表記に置き換えています。いずれも弊社が支援した事例に基づくものです。
金融|月間数千件を自動応対し、最大30分の待ち時間を解消

ある金融機関では、電話の問い合わせ対応をすべて人が担っていました。
問い合わせ件数の増加に人員増が追いつかず、呼損率が上昇し、待ち時間は最大30分に達していました。
ここにAIオペレーターを導入し、FAQのような定型的な問い合わせを自動対応に切り替えました。
外部システムと連携して最新情報をリアルタイムに取得し、言い直しや曖昧な表現にも対応できる対話制御を組んでいます。
結果として月間数千件の問い合わせを自動化し、最大30分の待ち時間は解消。人は判断や個別対応が必要な問い合わせに集中できる体制になっています。
【関連記事】【AI変革事例_金融業界】高品質なAIオペレーター導入によるコールセンター応対の自動化
EC・小売|応対ログを学習し、文脈を保持した会話を実現

ECのカスタマーサポートは、商品の多様化と配送・返品フローの複雑化で、問い合わせが一問一答では終わりません。
「さっき言った商品についてだけど」という会話が普通に発生します。従来の自動応答が有人対応に戻されてしまう理由は、ここにありました。
この事例では、過去の膨大な応対ログを分析し、顧客がどの順序で何を尋ねるのか、現場特有の言い回しはどうかを判断ロジックに組み込みました。
前の発言を保持したまま会話を継続できる設計により、複雑な問い合わせにもオペレーターと同じ柔軟さで対応できています。
加えて、応答ルールやナレッジを運用者自身が更新できる設計にしたことで、新商品の発売や突発的なトラブルにも現場だけで即応できるようになりました。
【関連記事】【AI変革事例_小売・流通業界】現場の応対ナレッジを反映した自動応答AIオペレーター
官公庁|粗大ごみ受付のPoCで、回答精度97.8%
京都市では、粗大ごみなどの持込ごみに関する問い合わせを、コールセンターに加えて市職員も直接受けていました。
限られた人員での対応に加え、夜間対応や多言語対応という新しいニーズも生まれていました。
そこで連携協定に基づき、AIボイスボットのPoC(実証実験)を実施しました。
よくある問い合わせを想定した約50パターンのシナリオを作成し、実際に複数回会話させて評価するという進め方です。
開発工数とデータ整備を最小限に抑えた簡易的な検証にもかかわらず、回答の正確性は97.8%に達しました。速度や自然さの課題も、原因と改善方法まで特定できています。
この事例が示すのは、大規模な投資をする前に、精度は測れるということです。
想定シナリオを用意して会話させれば、自社の業務でどこまで通用するかは数週間で判断できます。
【関連記事】【AI変革事例_官公庁・団体業界】AIボイスボット簡易PoCで97.8%の回答精度を実現
IT・通信|対象は社外だけではない。「社内からの電話」も自動化できる
見落とされがちですが、電話対応の負荷は顧客対応だけではありません。
ある大手情報通信企業では、外出中の営業担当者から営業サポート部門への問い合わせ電話が集中していました。
訪問直前に契約ステータスを確認したい営業担当者の電話を受け、スタッフが手作業で調べて回答する運用です。
ここでは、案件特定に必要な項目をAIが順序立ててヒアリングし、基幹システムと連携して契約ステータスを電話口で即座に回答する仕組みを構築しました。
案件を特定できない場合は、既存のポータルサイトでの確認を音声で案内する導線も用意しています。
AIで完結できる問い合わせと、人が介入すべき複雑なケースを明確に切り分けた点が、この取り組みの要点です。
【関連記事】【AI変革事例_IT業界】数千人の営業を支える「電話応対」をボイスボットで完全自動化
4つの事例に共通する、AIが向くスコープの条件
これらの事例に共通しているのは、いずれもスコープを切っていることです。
すべての電話をいきなり自動化した企業はひとつもありません。マニュアルや外部システムを参照すれば答えが定まる、問い合わせの型がある程度そろっている、そして件数が多くインパクトが小さくない。この3条件がそろう領域から着手しています。
逆に、高度な交渉や、感情への配慮が最優先される対応は今も人の仕事です。
アウトバウンドでも、アポイント獲得まで任せるのは現実的ではありませんが、受付の突破や資料送付の確認といった前工程に絞れば十分に成立します。
100件架電して担当者につながるのが10件なら、残り90件にかけていた時間を人から外せるという発想です。
AIが一次対応を担うと、人の仕事はどう変わるか
呼損率がゼロに近づくと、KPIは「応答率」から「応対品質」へ

エスカレーション先を除く全プロセス、つまり入電の振り分けから通話、ACW(アフターコールワーク)、CRM入力、FAQ作成、VOC評価までをAIが担えるようになると、コールセンターの前提が変わります。
最も大きいのは、呼損という概念がなくなることです。何件かかってこようとAIは応答できるため、24時間365日、常に即応答が可能になります。
多くの企業が達成できずにいたサービスレベルが、ようやく前提条件になる。そのとき初めて、各社は本来議論すべきだった応対品質に集中できます。
また、KPIも変わります。「何%の電話に出られたか」ではなく、「その会話で顧客の課題が解決したか」「体験としてどうだったか」を測る段階に進みます。
会話ログはすべてデータとして残るため、VOCの分類やFAQの自動作成、応対評価まで、これまで工数の壁で手が出せなかった改善が回せるようになります。
オペレーターの雇用はどうなるのか
この話をすると、「効率化を掲げれば、人員削減と受け取られてしまう」という懸念を必ずいただきますが、短期と長期を分けて考えることをお勧めします。
短期で言えば、変革できるのはまず1領域です。IVRに6つの窓口があるなら、そのうちの1つから始めることになります。動く人数は限られるためです。
しかも現在は人材不足と高い呼損率が同時に起きている状況ですから、その領域で浮いた人員を、手が回っていない他のセンターに回すだけでも顧客満足度は上がります。
コスト削減ではなく、サービスレベルの回復として説明できます。
長期では、人の配置そのものを設計し直す必要があります。
参考になるのは、社員の一定数をAIに置き換えると表明しつつ、その人員を新規事業に移すと語った経営者の判断です。
コールセンターに引き寄せるなら、ナレッジやFAQの整備、そして現在は手が回っていないロイヤルカスタマーへの個別対応が受け皿になります。
定型対応をAIに任せ、人による応対を高付加価値のサービスラインとして立ち上げる。雇用を守りながらCXを上げる道は、ここにあります。
SVの仕事は、ナレッジの整備とAIの応対設計へ
AIが電話に出るようになると、SVやリーダー層の役割は「オペレーターのフォロー」から「AIを含めた応対全体の設計」に移ります。
どういう応対をすべきかを考え、AIの回答を評価し、FAQとナレッジを磨き続ける。まさに複利の効く仕事です。
ここで重要なのは、AIを人と同じように育てるという発想です。
新しいコールセンターを立ち上げるとき、オペレーターの研修を終えても、想定外は必ず起きます。
1か月、2か月とアジャストして完成度を上げていくのが常識です。生成AIもまったく同じで、最初から完璧を求めるのではなく、運用しながら仕上げていく前提でスタートを切るべきです。
そして回答精度を保つ鍵は、参照するナレッジを常に最新に保ち続ける運用にあります。
【関連記事】ベルシステム24×AVILENが語る、“AI×人”が拓くBPOの未来|「Gartner® IT Symposium/Xpo™2025」登壇レポート
コールセンターAI活用は何から始めるか|1領域のクイックウィンを作る
CCAJ調査では、生成AIを「センター運営の実務で運用している」企業が48.5%に達し、「活用していない」はわずか2.9%でした。
用途は応対内容の要約が74.5%で最多、次いでメール文章の作成63.6%、FAQの自動生成61.8%と続きます(出典:CCAJ『2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査』)。
ここから先は、着手した企業とそうでない企業の差が開いていく局面です。
そのうえで強調したいのは、壮大な構想から入らないことです。
最初にやるべきは、1領域でいいのでAIがコールセンター対応をしているという状態を作り、社内に見せることです。順序を4つに分けて説明します。
1. スコープを選ぶ
生成AIが向いており、かつインパクトが小さくない領域を特定します。
前述の3条件(答えが定まる、問い合わせの型がある、件数が多い)で候補を絞り込みます。
IVRの窓口が複数あるなら、そのうち最も件数が多く、内容が定型的なものが第一候補です。
2. 基幹システムは置き換えない
CRMやCTI、IVRを刷新しようとすると、コストでも社内調整でも一気に難易度が上がりますが、着手すべきはそこではありません。
新しい電話番号を発行して窓口を分ける、あるいは既存のIVRから転送する形にすれば、既存システムを触らずに始められます。
ちなみに、AVILENグループのAIコールセンターをBPOサービスとして導入いただく形であれば、基幹システムの改修は不要です。
初期投資を抑えられるため、検証から本番までの距離が一気に縮まります。
3. ハルシネーション対策とエスカレーション設計を先に決める
生成AIが誤った回答をするリスクはゼロにはなりません。
AVILENの対策は2つです。
1つは、RAG(社内文書などを検索して回答に反映させる仕組み)で自社の情報に基づいた回答をさせること。
もう1つは、AIが自信を持てない場合は回答させず、人に渡すことです。
このとき効いてくるのがチケット管理です。
それまでの会話内容を引き継いだ状態で人にバトンを渡せれば、顧客は同じ説明を繰り返さずに済みます。現在の有人対応でも、SVへの転送時に情報が引き継がれないことは珍しくありません。
設計次第で、AIからの引き継ぎのほうが体験として優れているという状態は十分に作れます。
4. 精度は6割から始まる。そこから先が本番
最後に、期待値の置き方についてもお伝えしておきます。
AIエージェントは、作った直後の精度はおおむね6割から7割です。業務で使うなら8割、9割を目指す必要があり、そこに引き上げる工程には、人がアウトプットを確認する工数が伴います。ここに工数を割けるかどうかが、実装できる組織とできない組織を分けます。
また、「本当に9割答えられているのか」を証明するには、過去の問い合わせと正解データを突き合わせる作業が必要です。
京都市の事例で約50パターンのシナリオを用意したのは、まさにこの検証のためです。AIの性能を数値で語れるようにすると、「100%ではないから使えない」という感覚的な議論から、「90%できるなら、どこまで任せるか」という事業判断に移ることができます。
【関連記事】AIと人が「共に動く」組織へ。BPOの現場から見えた、オペレーション変革の本質
まとめ|AIに任せた先で、人は「複利の効く仕事」に戻る
コールセンターの課題は、応答率でも人件費でもなく、人に依存したプロセスそのものにあります。
採用に苦労している企業82.1%、平均放棄呼率12.2%(3年連続で悪化)という数字は、努力で埋められる差ではありません。
AIが一次対応を担えるようになったことで、この前提は変えられます。
呼損がなくなり、応対品質と顧客体験の設計に人が集中できる。SVはフォローの連鎖から抜け出し、ナレッジとコンテンツという複利の効く仕事に戻る。これが、AVILENが考えるコールセンター4.0の姿です。
そして、そこへ至る道筋は壮大な計画ではありません。1つの窓口をAIに任せ、精度を測り、社内に見せる。この最初の1勝を作れるかどうかが、すべてを決めます。
AVILENの支援について
私たちAVILENは、「データとアルゴリズムで、人類を豊かにする」をパーパスに、AI戦略コンサルティング・AI技術実装・デジタル組織開発の3つを一気通貫で提供しています。支援実績は約1,000社を超えます(2026年9月時点)。
コールセンター領域では、AVILENグループのAIコールセンター(音声会話AIエージェント)を中心に、次のかたちでご支援しています。
- どこをAI化すべきかの選定:業務と入電データを踏まえ、生成AIが向き、かつインパクトの出るスコープを一緒に特定します
- 入電から回答までのプロセス設計:シナリオベースからの脱却を前提に、外部システム連携やマニュアル整備を含めて設計します
- 既存システムを変えない導入:基幹システムの改修なしに導入でき、日本語での設定、チケット管理、会話データの柔軟な蓄積、堅牢なセキュリティを備えています
自社のどの窓口から始めるべきか、その領域でどこまで精度が出るのか。まずは現状をお聞かせいただければ、着手順の整理からご相談に乗ります。
お気軽にお問い合わせください。
記事の筆者

株式会社AVILEN
マーケティングチームリーダー/シニアマーケター / マーケター
マスコミ業界で編集・広告営業に従事後、ブレインパッドにマーケターとして参画。2020年、DX・データ活用をテーマとするオウンドメディア「DOORS -BrainPad DX Media-」を編集長として立ち上げ、メディアの成長を牽引。2022年にグループマネージャーに昇進。2025年7月よりAVILENに参画し、マーケティング戦略の立案からコンテンツ企画・制作、施策実行やAIエージェントを活用したマーケティング推進を統括。





