AIと人が「共に動く」組織へ。BPOの現場から見えた、オペレーション変革の本質

AIと人が「共に動く」組織へ。BPOの現場から見えた、オペレーション変革の本質

AIエージェントの活用が急速に広がる一方で、「どの業務に適用すべきかわからない」「導入しても成果につながらない」といった課題に直面する企業は少なくありません。

AIの開発だけでなく、業務理解に基づく実装・運用までを一体で支援する体制が求められている背景のもと、BPO業界大手のベルシステム24ホールディングスと、約400名のAIエンジニア人材プールとカスタマイズ型AI開発力を強みとするAVILENは、AIエージェントの実装型BPOモデルの構築を目的とした合弁会社「株式会社BA Intelligence」を2026年3月17日に設立しました。

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同社では、AI開発と業務運用を融合し、企業ごとの実務に適合したAIエージェントの実装・運用を支援する新たな事業を本格展開していきます。

本記事では、BA Intelligence代表取締役社長の鈴木靖二氏と、株式会社AVILEN代表取締役ならびにBA Intelligence代表取締役副社長の高橋光太郎が、AIエージェント時代に求められる業務変革のあり方や、実装型BPOがもたらす価値について語り合った(2026年7月8日開催)ウェビナーの内容を再編集してお届けします。

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BPOの「人ありき」モデルは、AIによって根本から変わる

株式会社AVILEN 代表取締役社長 高橋 光太郎(以下、高橋): BPO業界に長く携わってきた立場から、オペレーションの今後をどう見ていますか。

株式会社BA Intelligence 代表取締役社長・鈴木 靖二氏(以下、鈴木氏): BPOというのはもともと、労働集約モデルです。人ありきでビジネスを展開してきた業界でした。視点はいくつもありますが、まず大きな流れとして感じているのは、ここ数年で労働人口の不足が顕在化してきたことです。

働く方々の年齢も上がってきています。スキルのミスマッチがあっても、無理やり人を当てはめて業務を回すような実情が、現場にはあります。
言い方は良くないですが、スキルが合わない方でも何とかスキルを搭載して業務に当てはめる、そういう状況が続いてきました。

そういう状況の中で、AIを組み込むことで「それほど多くの人を採用・投入しなくても業務が回る世界」が、明らかに近づいてきました。
これはBPOに限らず、あらゆる現場で感じていることです。

高橋: 具体的に、発注側と受託側の会話はどう変わっていくのでしょうか。

鈴木氏: これまでのBPOの話題といえば、「人が何人取れますか」「その人はいくらですか」という話が中心でした。発注者側も受託者側も、人の頭数と単価の話をするのが当たり前だったわけです。
それが今後は、「100の工数のうち、50は人、50はAI」という組み合わせで見積もりを立てる世界に変わっていきます。

発注者側も受託側も、「人が何割、AIが何割」という会話が当たり前になっていくはずです。
間違いなく、そういう見積もりの仕方、値付けの根拠に変わっていくと思っています。

これはBPOに限った話ではありません。社内のオペレーションでも、経営者から「これだけの業務にこれだけの人数が必要」という前提を問い直すオーダーが上がってくる時代になるでしょう。
人月換算だけでなく、AIエージェントも含めた「出し構え」が基礎となる世界です。

「6割」から先が本当の勝負——完成度を上げる壁と、組織展開の難しさ

高橋: AIエージェントを作ること自体のハードルは下がっています。一方で、実務に使えるレベルに引き上げるところで苦労されている企業も多いです。

鈴木氏 :Claude CodeをはじめとするAIエージェントは、一定のスキルがあれば作ること自体はできます。こちらに参加されている方々も、感度が高い方が多いと思いますので、ご自身で作られている方もいるかもしれません。精度としては、最初に作った段階で大体6割から7割というのが実感です。「6割でもいいじゃないか」と一瞬思うかもしれませんが、実際に業務で使おうとすると、4割間違っていいということにはならない。
やはり8割、9割を目指さないと、実際には使えないというところがあります。

7割から先に上げていく作業には、AIによる改善だけでなく、人間が一定量、アウトプットを確認していく工数が伴います。
そこに工数を割けるかどうかが、実装できる組織とできない組織の分かれ目になっています。私自身も感じましたし、お客様との会話でも、必ずこの話になります。

高橋: たとえば社内の問い合わせ対応AIでも、精度を証明するのが難しいケースがあります。RAGシステムと呼ばれるものは一昨年頃から作られている会社もありますが、手元で「それっぽく動く」のは簡単でも、本当に9割答えられているのかを証明するのは別の話ですよね。

鈴木氏 :そうなんです。「本当に9割の質問に正しく答えられているのか」を証明するためには、過去の質問データと正解データを突き合わせていく作業が必要になる。
そのデータが残っていなければ、人が一件ずつ確認して採点するしかない。案外地道な作業がかかるものなのです。

高橋: 個人が作ったAIエージェントを組織全体で使えるようにする際には、組織の壁にぶち当たります。
組織の壁を、どう乗り越えていくべきでしょうか。

鈴木氏 :個人の環境で動いているものを、チームや組織に展開しようとすると、まずナレッジの共通化という問題が出てきます。
個人で保有しているナレッジをどこに格納し、どうエージェントに接続するか。個人で持っていたものを共通化できなければ、組織では使えません。

それだけでなく、社内デプロイには情報セキュリティ部門との調整も必要です。担当者レベルでは権限がなく、別の部門に申請しなければならないことも多い。
目的や安全性を丁寧に説明し、しかるべき承認を得ていく。そういう地道なプロセスを、省くことはできません。

よって、ウルトラCはありません。まず自分でしっかり学び、なぜこれをやりたいのかを関係部門の方々に丁寧に説明して理解を得る。

担当者間で済まない場合は、しかるべき方々に了解を取りに行く。それが壁を越える基本的な道筋だと思っています。

「明日から何をすればいいか」——決裁者に伝えたい、最初の一歩

高橋: AIは導入したものの、「便利になった」で止まってしまう。そうした企業の担当者や決裁者に向けて、どんなことをお伝えできるでしょうか。

鈴木氏 :少し定性的な話になりますが、AIに対して「なんかすごいんだろうな」という温度感で向き合っている方が、まだ多いように感じます。
最初にすべきことは、AIのインパクトを自分自身で体験することです。「まさかこんなことができるとは」という驚きを、自分で感じること。それが第一歩です。
一回でピンとこなければ、二回、三回、十回でもやってみてほしい。

私がこれまで話を聞いてきた限り、実際に体験した人で「大したことない」と言った人は誰一人いません。
やってみると、「こんなことができるんだ」という実感が生まれる。その体験が、自分自身の言葉で語れる説得力を生みます。

高橋: 自分で使ってみることが本当に重要ですよね。鈴木さんご自身が、AIの威力を実感したのはどんな場面でしたか。

鈴木氏 :最初は資料作成や調べ物で試してみて、一定の効果は感じていたんです。
ただ、「すごい!」と感じたのは、BPOの現場で業務を立ち上げるたびに作る「設計書」でした。

準備内容や手順をまとめた文書で、ものによっては20時間、30時間かかることもあります。それをAIに作らせてみたとき、一瞬で85点のものが出てきたんです。「こんな一瞬でできるの?」と。

自分の頭の中にあることをAIにうまく伝えられるのか、ちゃんとアウトプットされるのか、だったら自分で作ろうかと思っていたんですが、そんなにプロンプトをがっつりっと書かなくても、すんなりいったところはびっくりしました。
しかも、そこから90点、95点に持っていくのも、さほど時間がかかりませんでしたから。

高橋: まずできないと思っていることをAIに頼んでみる、というのが一番の入り口ですね。

鈴木氏 :はい。最初の一歩として一番適切だと思っています。

BA Intelligenceに相談できること——壁の種類に応じた支援の形

高橋: AVILEN、BA Intelligence、ベルシステムと、それぞれどのような内容を相談すればよいのでしょうか。

鈴木氏 :AVILENは、AIのシステム開発や活用方針のコンサルティング、人材・組織育成を得意としています。企業全体のAI変革を推進したい場合は、AVILENが力を発揮できる領域です。

BA Intelligenceは、特にオペレーションに強みを持ちます。多くの業務はAI化云々の前に、そもそも標準化されていないのが現実です。BPOのよいところは、標準化しないと外部では受けられないという構造にあります。標準化を進めた上で、人とAIを組み合わせたオペレーションを設計し、業務まるごと担う——そういうことができます。

社内の業務オペレーションのコスト削減、既存BPOのAI BPOへの切り替えなど、PLに直結する変革を検討されている方に、ぜひ相談いただきたいと思います。

ベルシステムは従来型BPOの相談窓口になります。三社は連携していますので、どこに相談いただいても、内容に応じて適切な会社に繋いでいける体制になっています。迷ったらまずどこかにご連絡いただければ大丈夫です。

高橋: 最後に、AI活用に取り組む企業に向けてメッセージをお願いします。

鈴木氏 :AIを組み込む上での壁は、リテラシーの問題、セキュリティの問題、プロセス標準化の問題など、企業ごとに異なります。
大事なのは、「うちにはどの壁があるのか」を正確に見極めることです。その壁に合った形でサポートできることが、BA Intelligenceの強みだと考えています。

BPOとしての受託でなくても、教育コンテンツの整備や、エージェントの開発・検証という形での関与も可能ですのでお気軽にご相談いただけると幸いです。

Q&A——ウェビナー参加者からの質問と回答

ウェビナー終了後、参加者からさまざまな質問が寄せられました。以下では、その中から特に反響の大きかった質問と回答をご紹介します。

Q1. 消費者の個人情報など機微な情報を扱う業務にAIを導入する際、どのようにアプローチするのが筋がよいですか?

高橋: よくある課題です。社長肝いりのプロジェクトであっても、個人情報保護法という法律の壁は超えられません。

注意すべき点は大きく二つあります。

一つ目は「許諾」の問題です。取得している個人情報を何に使ってよいか、消費者から同意を得ているかどうかを確認する必要があります。
最近はサービス登録時に「商品・サービス改善のために使用します」といったチェックボックスが増えています。もし情報取得の入り口を変更できる立場にあれば、そこを整備することで活用の幅が大きく広がります。

二つ目は「海外サーバーへの送信」の問題です。
ChatGPT、Gemini、Claude、Copilotなど主要なAIサービスは、多くの場合アメリカをはじめとする海外のサーバーで処理されます。許諾なしに個人情報を海外サーバーに送信することは法的リスクを伴います。

この点については、たとえば日本国内のサーバーのみで処理が完結するAIエージェント環境を構築することで、法的リスクを回避しながら活用を進めることができます。
入り口の情報利用に関して工夫した上で、日本リージョンで動く環境を作って提供する——そういうアプローチがおすすめです。

Q2. 昨今、AIエージェントとしてどのサービスがメジャーになってきていますか?

高橋: 利用率で見ると、グローバルではClaudeが現在最も伸びています。

ChatGPTを追い抜いて、今この瞬間(2026年7月8日時点)で言えば圧倒的にClaudeが強いというのが実感です。

その理由は、一気通貫で業務を処理できるエージェントとしての完成度の高さと、企業の業務フローに溶け込ませるための機能が豊富な点にあります。

ただし、AIの性能は時系列で変化し続けます。GoogleのGeminiは「Gemini Spark」を今年中に日本向けにリリースする見込みで、Claudeに近い機能を持つとされています。
MicrosoftのCopilotも、Claudeに近い機能の一部が最近リリースされました。

重要なのは、AIの性能そのものよりも、自社の既存システムや情報との連携のしやすさです。
会社全体がMicrosoft環境やGoogle環境であれば、CopilotやGeminiとの親和性が高い場合もあります。短期的にClaudeで乗り越えながら、将来的に切り替えるという選択肢も十分あり得ます。

Q3. 新規顧客へのデモ提案の際、どのように提案を組み立てていますか?

高橋: 本当にインパクトを出すためには、業務プロセスを細かく分解して設計する必要があります。ただ、デモを作ること自体は比較的シンプルです。

押さえるべきポイントは三つです。

①業務の入り口(何をインプットするか)
②業務の出口(何をアウトプットするか)
③その間にある最も複雑・重要なプロセスの一つ

この三点を把握すれば、デモとして機能するエージェントは比較的短時間で作れます。あまりに複雑でなければ、の話ですが。

入り口と出口を定め、そこをつなぐプロセスの仮説を立てて、まずエージェントとして動かしてみる。
そのアプローチで、精度としては40点程度のものは作れます。デモはあくまで可能性を示すものであり、そこから実用レベルに引き上げていくのが実装フェーズの本番です。
そこからの精度向上こそが、組織としての真の勝負どころです。

BA Intelligenceへのお問い合わせは、こちらからお願いいたします。