なぜ今「E資格」が必要なのか?合格者が語った、生成AI時代の学び直しと実務のリアル

生成AIの急速な普及によって、コード生成やデータ分析、文章作成は以前よりも手軽になりました。
その一方で、「AIがそれっぽい答えを返してくれる時代に、深層学習をロジックから体系的に学ぶE資格は本当に必要なのか」という問いも強まっています。
AIの仕組みを根本から理解してコントロールするか、それとも出力をただ利用する段階に留まるか。この選択は、今後の実務における主導権やキャリアの市場価値に大きく関わるテーマとなっています。
「E資格」とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定する資格試験で、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を実装する能力を問うものです。
AIの仕組みを「使う」だけでなく「作る・検証する」ための知識を体系的に証明できる点が特徴で、AIエンジニアやデータサイエンティストのスキル証明として広く認知されています。
2026年7月7日に開催されたAVILEN主催ウェビナーでは、この問いを正面から扱い、生成AI時代だからこそ人間に残る責任とは何か、そしてE資格が実務やキャリアにどうつながるのかが、合格者の実体験を交えて語られました。
ウェビナー全体は、導入、トークセッション、講座案内、質疑応答の流れで進行し、参加者が次に取るべきキャリアのアクションを見定めるための一助となることを目指して開催されました。
◆登壇者
- 株式会社AVILEN ビルドアップチーム Learning Creation(LC)Unit データサイエンティスト 落合 達也
- 株式会社AVILEN D&Aソリューションチーム Data Science(DS)Unit データサイエンティスト 水谷 和貴
※本記事は、当ウェビナーの内容に合わせて、AVILENがこれまで発信しているE資格に関するコンテンツも参照したうえで再編集しています。
目次
監修者

株式会社AVILEN
ビルドアップチーム / データサイエンティスト
東京理科大学大学院にて数理統計学の修士(理学)を取得。ソフトバンク株式会社を経てAVILENへ。金融系クライアント先にてAI案件の企画・推進を担い、予測・分類・時系列解析など数多くのモデル開発を経験。その知見を活かし、現在は企業向けeラーニング講座の企画・設計・運営を担当し、「ビジネス現場でAIを使える」人材の育成を支援している。2020年 E資格 #1取得者。
「AIが形にしてくれる時代」でも、人間の判断責任は消えない
セッションの前半では、まず生成AIを取り巻く前提が整理されました。ChatGPTやGeminiなどの登場により、データ分析、コード作成、文章生成といった作業は、以前よりはるかに短時間で「形」にできるようになったと紹介。
業務やプライベートでツールを使い分ける事例も交え、「今や生成AIが大抵のことを、なんとなく形にしてくれる時代だ」と語られました。
しかし、それで仕事が完結するわけではありません。ビジネスパーソンとAIの関わり方として、「選ぶ・使う」(DX推進、企画、人事など)、「作る・育てる」(エンジニア、研究職など)、「届ける・提案する」(SIer、ベンダー、コンサルなど)の3つの立場が提示され、それぞれに課題があると指摘されました。
たとえば、ツール導入を検討する立場では、ベンダーから提示されたAI提案の妥当性を自力で判断できないことがあります。
例えば、「業務効率化にはRAGの実装が必要で、これだけの費用がかかります」と提案されても、その工数や費用の妥当性を判断できず、言い値で受け入れてしまうといったケースです。
提案側でも、バズワード先行で資料を作ってしまい、実装やデータ適合性の検証が不十分なまま話が進む危うさがあります。
開発側でも、AIが提案した仕様やコードを十分に理解しないまま使えば、本番環境で品質保証が難しくなります。

このように、生成AIが出力を助けてくれる一方で、その妥当性や実現性を見極め、それが本当に正しいか、最適かを判断してゴーサインを出す責任は人間に残る、という問題提起がなされました。
この問題意識が、今回のテーマである「なぜ今、E資格なのか」へとつながっていきました。
では、実際にE資格を取得した2人は、なぜこの資格を選んだのでしょうか。
「スキル的な危機感」と「自分だけではやり切れない」が受験の動機に
セッションではまず、数あるAI資格のなかで、なぜ2人がE資格を選んだのかという点について語られました。
落合は、自身の専門が統計学だったため、当時主流になりつつあった機械学習やディープラーニングの知識不足に危機感を抱いていたと振り返ります。
独学での挑戦に挫折した経験から、「スキル的な危機感と、自分一人ではやり遂げるのが難しい」と感じ、明確な目標設定としてE資格を選んだと語りました。

水谷の動機は、さらに切実でした。
情報系の学部に所属していたものの、実践的な開発経験が不足していたためインターン選考でも苦戦。当時、AVILENの開発インターンにもスキル不足で通らなかったと率直に明かし、「AI開発のスキルが低すぎたことが発端」だったと振り返りました。
そのうえで、すでに独学でG検定を取得していたため、その延長線上で、よりスキルを高める目的でE資格取得を決めたと説明しました。
「E資格を取ったら世界が変わる」と思ったが、変化はすぐには来なかった
取得後の変化についての話では、2人とも「合格した瞬間に劇的に変わったわけではない」と率直に語った点が印象的でした。
水谷は、E資格取得直後に「世界が変わるのでは」と期待したものの、すぐに案件に入れるわけではなく、「何も変わっていない」と感じた時期があったと振り返ります。
しかし、E資格の知識によって自分に足りないもの、特に開発経験が明確になったといいます。
その後は学習や個人開発を続け、AVILENでの業務委託を経て約1年後に開発案件へ参画。エンジニア、マネジメント、PMへとステップアップを果たした経験から、「E資格は、今後何をすればいいのかという道しるべになる」と語りました。

落合は、E資格取得によって社内で開発事業部へ移り、「データサイエンティストとしての第一歩」を踏み出せたと話しました。
また、対外的な信頼の面でも意味があったと振り返ります。金融機関の専門家と向き合うなかで、E資格が機械学習やディープラーニングの知識を証明し、信頼獲得に大きく貢献したといい、「クライアントへの証明になることは身をもって経験した」と語りました。
「PoCのスピードがものすごく上がった」──生成AI普及後の実務変化
生成AIの普及によって業務がどう変わったのか。
落合は、現在の主業務であるeラーニング企画運営において、カリキュラムの叩き台作成や情報収集などが大幅に効率化したと説明。
「以前は2週間かけていたものを、生成AIが数時間で出してくれる」とその変化を語り、技術のキャッチアップも容易になったと述べました。
さらに、企業からの相談内容も変化しており、以前のような「AIとは何か」という初歩的なリテラシー研修だけでなく、「実際に業務にどう使えるのか」という、より本質に近いテーマが増えてきたと指摘しました。
水谷は、開発現場の視点から、特にPoC(概念実証)フェーズでの変化を強調。「アイデアの検証スピードがものすごく上がった」と述べました。
開発をPoC、MVP(実用最小限の製品)、本番開発の3段階に分けたうえで、PoCでは生成AIの恩恵が非常に大きいと説明します。
例えば、図面から情報を抽出する案件で、画像処理、物体検出、LLM活用など複数の手法が考えられる場合、以前はそれぞれを試すのに時間がかかりました。今では、思いついたアイデアをその場でAIに検証させることで、多数の選択肢を短時間でふるいにかけられるようになったというのです。
一方で、MVPや本番開発ではセキュリティや安定性の観点から依然として人間の知識と実装力が重要だとし、「PoC以降は人間が主役になるフェーズ」だと付け加えました。
E資格で学ぶ知識の重要性は、生成AIにより相対的に下がるのか?
「生成AIがあるなら、E資格で学ぶ知識の重要性は相対的に下がるのではないか」。この疑問に対し、水谷は「生成AIで全部解決できることは一つもなく、得意不得意がある」と明確に否定しました。
E資格を通じて得られる価値として、水谷が挙げたのは「手札が増えること」でした。
これをポケモンの育成に例え、「相手のタイプに合わせてポケモンを使い分けるように、AI開発でも課題に応じて最適な手法を選ぶ必要がある」と説明。その判断材料として、体系的な知識が生きるという考えです。
落合も、企画職に移った現在でもE資格で得た知識は大きな財産だと話します。
「E資格の知識が土台にあるからこそ、新しいツールが出ても臆せず、迷わずに使える」と述べ、基礎理解があるからこそ構造をイメージしながらツールに触れることができると説明しました。
RAGのような新しい仕組みに対しても、自然言語処理の知識があることで理解しやすかったと語りました。
さらに、提案時の技術妥当性やコスト感の判断にも、その知識が効いているといいます。
実際に、九州電力グループのQsol株式会社では、IT・プログラミング未経験の新入社員がAVILENのE資格講座を受講し、ディープラーニングの原理原則を体系的に理解したうえでAIモデルの評価検証業務に携わるようになった事例があります。
文系出身・IT未経験からでも、体系的な学習によって実務で通用する判断力が身についたという点は、今回の議論を裏付けるものです。
【関連記事】【Qsol(九電グループ)×AVILEN】九電グループでAIをリードする「Qsol-Lab」に聴く、AI人財育成とAIソリューション開発の推進と、E資格合格者の生の声
「全員が無条件に取るべき資格ではない」──E資格の向き・不向き
今回のセッションで印象的だったのは、登壇者がE資格を無条件に勧めていなかったことです。
落合は、「E資格は全員が取るべき資格ではない」と明言。AIとほぼ関わらない業務であれば、DS検定や統計検定、あるいは生成AIで何かを作る経験を優先したほうがよい場合もあると述べました。
その一方で、AIを開発する側とコミュニケーションが発生する立場の人、あるいは提案や要件整理、判断を担う人にとっては、E資格は有力な選択肢になると整理しました。
特に、要件が曖昧なまま開発側に「投げっぱなし」にせず、自分たちで判断の軸を持つために、G検定より一歩踏み込んだ理解が必要になる場面があると指摘しました。
水谷も同様に、すでにAIを使った仕事が目の前にあり、実案件で学べる環境にいる人にとっては必ずしもE資格が最優先ではないとの見解を示しました。
「AIを使ったプロジェクトを推進できる立場にある方は、特にE資格は必要ない」と語ります。
ただし、そうした機会がまだなく、スキル不安から挑戦しづらい人にとっては、E資格が有効な第一歩になるとも強調しました。
実際に、大塚商会では、営業部門の執行役員がAIエンジニアリングの知識ゼロからE資格を取得し、PoC案件のレビューでエンジニアと対等に議論できるようになった事例があります。
この経験を社内勉強会で共有したところ、300名が参加し、36名の営業社員が自らE資格取得に挑戦する意思を示すという広がりも生まれました。
エンジニア以外の立場であっても、提案・判断を担う人材にとってE資格が有効な選択肢になることを示す事例です。
【関連記事】【大塚商会×AVILEN】AIビジネスの推進役として、知識ゼロからのE資格合格!
学習の進め方と乗り越え方
学習方法の話では、水谷が自身の受験時の進め方を紹介しました。情報系出身という前提はありつつも、試験半年前から1か月前まではゆっくりと講座や書籍で学習を進めていたといいます。
特にコーディングに苦労し、コードの意味が分からず実装も見通せない状態だったそうです。
その際には、『ゼロから作るDeep Learning』シリーズ(オライリージャパン)のサンプルコードを、いわゆる「写経」のように1つずつ手で打ち込みながら理解を深めたと振り返りました。そして試験1か月前からは、過去問や反復用の問題を集中的に解き、本番に備えたといいます。
また、質疑応答では、初心者が2月合格を目指す場合の学習イメージについても説明がありました。
機械学習講座を先に進め、その後は対応するチャプターごとにコーディング試験をこなしていく形が勧められていました。毎日2〜3時間ほどの学習時間を確保できれば進めやすい、という目安も共有されました。
こうした学習の進め方は、AVILENが提供する「全人類がわかるE資格講座」の設計とも重なります。
同講座は、深層学習の理論と実装を学ぶ講義動画、実装力が身に付くコーディング試験、本試験を想定したWebテストで構成されており、間違えた問題だけに絞って復習できる機能や、コーディング演習でのフィードバック体制など、文系出身・IT未経験の受講者でも段階的に理解を深められるよう設計されています。

【関連資料】全人類がわかるE資格講座
費用対効果はあったのか
学習時間も費用もかかるE資格に対して、費用対効果は見合うのか。
ここでも2人は、ともに肯定的でした。
落合は、E資格がなければ開発現場や企画推進の立場には至れなかった可能性が高いとし、キャリアの選択肢が広がった今、「とてもいい投資だった」と振り返りました。企画職から再びデータサイエンティストに戻る道も開けているなど、長期的なキャリアの柔軟性が高まった点を価値として挙げました。
水谷も、現在AI開発の仕事ができていること自体がE資格を起点に学び続けた結果だとし、「現状で見ても100倍くらいのリターンは出ている」と断言。キャリアの第一歩として強く勧められると語りました。
個人の実感だけでなく、組織的な広がりとして効果が現れた例もあります。
ダイハツ工業では、車両性能開発部のわずか3名から始まったAI活用の取り組みが、G検定・E資格を活用した人材育成を通じて部門全体、さらに全社レベルの取り組みへと発展しました。
G検定をマネジメント職、E資格を実務者向けに位置づけることで、役割に応じた学び直しの投資対効果を最大化しています。
【関連記事】【ダイハツ工業×AVILEN】車両性能開発部のAI人材育成の取り組み
まとめ──E資格は「合格して終わり」ではなく、その後の道筋を照らす
今回のウェビナーでは、生成AI時代におけるE資格の価値が、過度に美化されることなく、実務に引きつけて語られました。
ポイントを整理すると、次の通りです。
- 生成AIが出力してくれる時代でも、正しさや最適さを判断する責任は人間に残る
- E資格は、AIの仕組みを根本から理解し、提案・開発・判断の質を高める土台になりうる
- 一方で、全員に必要な資格ではなく、現在地やキャリアの方向性によって向き不向きがある
- すぐに人生が変わる資格ではないが、その後に何を学び、どう進むかを見定める道しるべになりうる
彼らの言葉を借りれば、E資格は「取った瞬間に世界が変わる」ものではありません。
しかし、AIとどう向き合い、どこまで自分で判断し、どこから先を学ぶべきかを見通すための基盤にはなり得ます。
生成AIの便利さが民主化される今だからこそ、その出力を鵜呑みにするのではなく、仕組みを理解した上でコントロールする側に立つことの価値が、改めて問われていることが伝わるセッションでした。
これからE資格に挑戦したい方は、AVILENの「全人類がわかるE資格講座」の資料もあわせてご確認ください。
記事の筆者

株式会社AVILEN
マーケティングチームリーダー/シニアマーケター / マーケター
立命館大学文学部を卒業後、大手地方新聞社、ビジネス系出版社での編集、広告営業職を経てブレインパッドにマーケターとして参画。2020年にDX、データ活用をテーマにしたオウンドメディア『DOORS -BrainPad DX Media-』を編集長/PMとして立ち上げ、グロース。ブランディングとプロモーションを両立したコンテンツマーケティングで成果を上げ、2022年にグループマネジャーに昇進。2025年7月よりAVILENに参画。






