AI内製化の成功事例11選|「外注し続ける組織」から「自走する組織」へ変えた企業は何をしたか

- AIを導入したはずなのに、社内にノウハウが残っていない
- PoCは通ったのに、本番運用の話になると進まない
- 改善したいことが出てくるたびに、また外部に依頼することになる
AI活用に取り組む多くの企業から、私たちAVILENに寄せられる声です。いずれも根っこにあるのは同じ問題です。AIの「成果物」は手に入ったものの、それを生み出し、改善し続ける「能力」が組織に残っていないということです。
本記事では、AVILENが実際に支援した11の事例を、業界ではなく「内製化の到達レベル」で整理して紹介します。
自社が今どの段階にいて、次に何をすべきかを照らし合わせながら読める構成になっております。
目次
監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CRO / コンサルタント
東京大学大学院修了。BCGプロジェクトリーダー、ITベンチャー執行役員を経てAVILENに入社。 BCGでは製造業・通信・金融・小売・製薬等の業界でトランスフォーメーション、ターンアラウンド等々のテーマで戦略策定から実行支援に従事。ITベンチャーでは基幹事業の責任者として5部署を統括し、事業グロースに従事。 AVILEN入社後はビルドアップ事業の責任者や自らも担当をもちながら大企業向けアカウントをリード。
なぜ今、AI内製化なのか
「AIを使う」から「AIを作る」へ
2026年に入り、企業のAI活用は明らかな転換点を迎えています。
「外部ベンダーにAIを作ってもらう」段階から、「現場社員自身がAIを作る」段階へと、大手企業が続々と踏み出しています。
背景にあるのは、投資額と成熟度の高いギャップです。
ある調査(※)では、92%の企業が生成AIへの投資拡大を予定している一方で、自社の取り組みが「成熟段階にある」と感じている企業はわずか1%という結果が出ています。
(※)『Superagency in the workplace: Empowering people to unlock AI’s full potential』(2025、マッキンゼー&カンパニー)
使っていることと、成果を出し続けられることの間には、大きな距離があるということです。その距離を埋める手段として、内製化が改めて注目されています。
外注依存が生む3つの構造問題
外部ベンダーへの依存が長く続くと、以下の3つが構造的に発生します。
①ノウハウが残らない
モデルやシステムという成果物は手元に残りますが、「なぜその設計になったのか」「どう検証したのか」という判断の根拠はベンダー側に残ります。
結果としてAIがブラックボックス化し、社内で判断できない領域が広がっていきます。
②PoC止まりになる
これまでの「AI導入」は、既存業務の一部を代替する局所的な改善が主流でした。
その多くは概念実証(PoC)の段階で足踏みし、大きな経営インパクトを生み出せていません。この状態を、私たちは「AI導入の罠」と呼んでいます。
③改善が続かない
AIはリリースしてからが本番です。現場からのフィードバックを受けてモデルを磨き続ける必要がありますが、そのたびに外注の見積もりと承認を待つ体制では、改善サイクルの速度が現場の変化に追いつきません。
この3つは、担当者の能力やベンダーの良し悪しではなく、支援の座組みそのものから生まれる問題です。だからこそ、座組みを設計し直すことで解消できます。
【関連記事】【2026年最新】AIプロジェクトの企画と失敗しない進め方を解説
内製化のスピードを決めるのは、スキルよりも体制
事例を見ていく前に、一つ前提を共有させてください。
これから紹介する事例には「2〜3ヶ月で自走に到達した」というものが複数含まれますが、これはどの企業でも同じ期間で到達できるという意味ではありません。
AVILENのデータサイエンティスト数名に「内製化がうまく進む企業の共通点」を聞いたところ、繰り返し挙げられたのは技術力ではなく体制の話でした。
①専任を置けるか
通常業務をやりながらAIにも取り組む体制では、確実に遅くなります。
通常業務を担う人と推進する人を明確に分けること、そして短期集中で取り組むこと。中途半端な兼務が、最も時間を浪費します。
②推進する人が現場業務の全体像を把握しているか
DX推進室やデジタル戦略室のような横串組織を設置している企業は多くありますが、それだけでは進みません。
現場に非常に近い人が、自分ごととして動けるかどうかが分かれ目になります。「言われなくてもAIやITで業務を効率化したい」と考えて行動に移す人が事業部にいるか、と言い換えてもいいかもしれません。
③上長・事業部長の理解と権限移譲があるか
ツールの使用を許可し、推進にゴーサインを出すのは事業部長やマネジメント層です。ここに理解がないと、現場がいくら動こうとしても止まります。
内製化を本気で進めるなら、現場の育成より先にマネジメント層への研修が必要になるかもしれません。
④クイックに試せる環境と、適切な工数配分があるか
ツールの利用申請に何週間もかかる環境では、試行錯誤の回数が稼げません。工数の采配、権限移譲、上長の理解、ツールをすぐ使える環境、そして現場の協力カルチャー。
これらが欠けていると、同じ取り組みでも所要時間は大きく変わります。
スキルレベルはどうか
意外に思われるかもしれませんが、高度な専門スキルは必須条件として挙がりませんでした。
必要なのは、ClaudeやGeminiといったツールを臆せず触り、自分で情報収集できる程度のスキルです。
不安であれば、E資格レベルの基礎知識と入門書を一通りかじる程度で十分だという声もありました。
内製化が進まない原因は「人材のスキル不足」に求められがちですが、実際に効いているのは専任を置けるか、現場に近い人が動けるか、上が理解しているかという体制側の要因です。
以降の事例も、この前提で読んでいただければと思います。
内製化の到達レベルを4段階で整理する
「内製化できているか、できていないか」という二分法で考えると、自社の現在地が見えなくなります。実際のプロジェクトを見ていると、内製化には明確な段階があります。
Lv1|開発プロセスを「体験」する段階
モデルの作り方や検証の進め方を、実案件を通じて現場メンバーが体験する段階です。まだ自社だけでは回せませんが、「AI開発とはこういうものか」という感覚が組織に入ります。
Lv2|一部の工程を自社で回せる段階
データの前処理やモデルの再学習など、特定の工程を自社で担えるようになる段階です。内製化の基盤ができた状態といえます。
Lv3|プロジェクトを自律的に推進できる段階(自走)
課題設定から検証、改善までのサイクルを、外部の支援なしに回せる段階です。AVILENの支援事例には、後述する前提条件(専任・短期集中・領域の絞り込み)が揃った状態で、この段階に2〜3ヶ月で到達したケースが複数あります。
反対に、条件が欠けていれば同じ到達点にたどり着くまでにはるかに長い時間がかかります。
Lv4|組織として横展開できる段階
1つのチームの自走にとどまらず、他部門・他グループ会社へノウハウを展開できる段階です。
CoE(Center of Excellence:全社横断で専門知を集約・展開する組織)の構築や、全社規模の育成プログラムが、この段階の代表的な打ち手になります。
ただし注意点があります。CoEを設置すること自体は到達点ではありません。
横串組織を置いても、現場に近い人が自分ごととして動かなければ、施策は現場に届かないまま終わります。
Lv4が指すのは「仕組みを作った状態」ではなく、「仕組みが現場で回っている状態」です。
以下では、この4段階に沿って11事例を見ていきます。
※Lv1~4でそれぞれ優劣を付けるものではありません。
【Lv1〜2】まず「作る経験」を組織に残した事例
事例1|製造業・波形データを用いた異常検知AIのOJT

プレス加工製品の検品を目視で行っていた製造企業での事例です。人による検品のため基準にばらつきがあり、属人的になっていたことから、異常品の出荷リスクを最小限に抑えたいという課題がありました。
AVILENは、AEセンサーを用いた波形データの取得方法を確立し、AutoEncoderによる教師なし学習モデルを開発・検証しました。
センサーデータの品質問題を特定して改善策を提案するところまでを、現場の作業者と共に進めています。
この事例で注目すべきは、成果が「検品の自動化」だけではなかったことです。
作業者のAI開発スキルが向上し、センサー技術の重要性に対する認識が高まり、今後の自動化プロジェクトの基盤ができました。
「なぜAEセンサーが必要なのか」「モデルはどう検証されるのか」というプロセスを共有したことで、技術の定着率を高めています。
内製化の第一歩は、大がかりな体制構築ではありません。「まずやってみよう」という立て付けで、実案件の開発プロセスを現場が経験することから始まります。
【関連記事】【AI変革事例_製造業界】波形データを用いた異常検知AIの開発OJT
事例2|小売・流通業・配車計画最適化システム

大手小売・流通企業で、配車計画のAI自動生成をすでに導入していたケースです。
同社では、AIが提示する計画に対して現場ユーザーが多大な手動修正を加えねばならず、AI導入の恩恵が限定的になっていました。
AVILENは、LightGBMやGNN(グラフニューラルネットワーク:グラフ構造を持つデータを扱う深層学習モデル)とAttentionメカニズムを組み合わせたモデルを検証しました。
そして最も重要な提案が、現場ユーザーの「修正履歴」を学習データとして資産化するというデータ戦略でした。使い続けるほど現場の判断基準に近づく仕組みを構築しています。
あわせて、PoCからMVP(最小実行可能製品)開発、本番リリースに至るまでの段階的な開発プロセスを設計し、開発工程全体をクライアント企業のメンバーと共同で進めました。
手動修正の工数を大幅に削減しながら、外部に頼りすぎず自社でサービスを磨き続けられる基盤ができています。
【関連記事】【AI変革事例_小売・流通業界】個々のユーザーに最適化された「配車計画最適化システム」の開発
【Lv3】自走に到達した事例 ― 専任と短期集中がそろったとき
ここから紹介する5事例には、共通する特徴があります。
いずれも2〜3ヶ月という短期間で、チームが自律的にプロジェクトを推進できる状態に到達していることです。
ただし繰り返しになりますが、この期間は前提条件の上に成り立っています。
いずれのケースも、担当メンバーが専任に近い形で関わり、対象領域を絞り込み、短期集中で取り組んでいます。同じ支援を通常業務との兼務で受けた場合、同じ期間では到達しません。
事例3|サービス業・パッケージデザイン生成モデル

食品パッケージ制作の初期段階で必要になる大量のデザイン案を、画像生成AIで出力する取り組みです。
クライアントはStable Diffusionの活用を検討していましたが、生成AIに関する基礎的知見と開発ノウハウの不足から、具体的な導入施策に踏み出せていませんでした。
AVILENは、Stable Diffusion・CLIP・Imagenなどのアルゴリズムに関する専門講義を行い、fine-tuning(追加学習)の方法確立に向けた具体的なアドバイスを提供しました。
週1回の定例コンサルティングとSlackでのQ&Aサポートにより、疑問点を即座に解消できる環境を整えています。
成果は2つありました。業務面では、従来約1ヶ月を要していた初案作成期間を2〜3日に短縮。組織面では、わずか2ヶ月で社内メンバーがAI開発プロジェクトを自走できるレベルまで成長し、開発・運用・改善のサイクルを自社内で完結できる体制が確立しました。
変化の激しい画像生成AIの領域で、自社でアルゴリズムを理解しfine-tuningの手法を確立したことは、競合に対する大きな優位性になります。
【関連記事】【AI変革事例_サービス業界】パッケージデザイン生成モデル開発に関するアドバイザリーを実施
事例4|不動産業・土地価格予測AI

業界大手の不動産企業で、土地の適正価格を算出する価格予測モデルの実用化を目指していたケースです。
社内にAI開発のプロジェクト経験者が不在で、新設されたデータサイエンティストチームが「精度の壁」に直面していました。
AVILENは受託開発ではなく、将来的な内製化を見据えた伴走型OJTを実施しました。
モデリング技術やWebAPI化、AIプロジェクトマネジメントの知見を直接共有し、シチュエーションに応じた評価方法を指導することで、精度の壁を突破する仮説検証サイクルを定着させています。
技術面では、予測誤差を9%前後まで抑えて実用レベルの精度を達成。12秒を要していたAPIの応答時間を1秒未満へと改善しました。
組織面では、支援開始からわずか3ヶ月でチームが自律的にプロジェクトを推進できる状態へ成長しています。
特筆すべきはその後です。現在このチームは、支援なしでも社内の他プロジェクトを自律的に遂行できるレベルに達しています。
AIモデルという成果物以上に、それを生み出し改善し続ける組織の能力を構築した事例です。
【関連記事】【AI変革事例_不動産業界】土地価格予測AIの精度向上と開発チームの自走化支援
事例5|IT業界・3Dモデル類似度検索

この事例は、内製化の難しさと可能性の両方を象徴しています。
クライアントの大手ソフトウェア企業は、自社エンジニアが自らデータサイエンスやAIの知見を取り入れ、3年もの月日を費やして研究開発を続けていました。
つまり、内製化への意思も人材もすでにあったのです。しかし論文に基づいた独自開発を進めても期待する精度には届かず、開発の長期化によるコスト増大と市場投入の遅れが深刻な問題になっていました。
AVILENが手を入れたのは、アルゴリズムそのものではなく、「評価指標の設定」と「データセットの作り方」というAI開発の最上流工程でした。
現場で「本当に使える」検索システムにするための適切な精度評価指標を新たに設定し、どのようなデータセットを構築すれば実用性が高まるのかを深い洞察に基づいて仮説化しています。
結果、3年間の停滞が嘘のように、支援開始からわずか3ヶ月で本番導入可能な精度を実現し、検索精度は従来比30%向上しました。
この事例が示すのは、内製化が行き詰まる原因は必ずしも「人材がいないこと」ではないということです。
技術を知識として持つことと、それをビジネス成果に結びつける「実践知」との間には差があり、その差は最上流工程に現れます。
【関連記事】【AI変革事例_IT業界】3Dモデル類似度検索の精度を劇的に向上
事例6|製造業・顕微鏡画像からのアスベスト検出

大手精密機器メーカーが、建築・解体事業者向けのミクロ繊維自動検出システムを開発していた事例です。
建物を取り壊す際の空気中にアスベストなどの有害なミクロ繊維が含まれていないかを確認する顕微鏡ソリューションですが、従来の画像処理技術では誤検知が多く実用に耐えない状況にありました。
同社は顕微鏡ハードウェアの開発には高い技術力を持つ一方で、ソフトウェアやAI開発の知見が少なく、将来的な内製化を目指しながらも社内にプロジェクト経験者がいないという課題を抱えていました。
AVILENは、セマンティックセグメンテーション(画像を画素単位で分類する手法)によるモデル開発と並行して、以下の伴走型OJTを提供しました。
- 週1回の定例コンサルティング
- Slackでの随時Q&A対応
- サンプルコードの提供とコードレビュー
- 開発アシストとPM代行
アノテーションからモデル構築、評価・改善という一連のプロセスを、クライアントのエンジニアと共に進めることで、AIソリューション開発の「やり方」そのものを伝えています。
結果、3ヶ月のPoCで実際のプロダクトに搭載可能なレベルの自動検出AIを完成させると同時に、プロジェクトメンバーが自走できるレベルまで成長しました。
「顕微鏡で見る」というハードの価値に、「AIで自動検知する」というソフトの価値が加わったことで、顧客へ提供できるソリューションの質が抜本的に向上しています。
【関連記事】【AI変革事例_製造業界】顕微鏡画像からミクロ繊維(アスベスト)を正確に特定
事例7|製造業・数理最適化による生産計画

デンソーテクノ株式会社と実施した、生産計画の最適化プロジェクトです。
製造現場では、設備の切替時間、材料の使用制約、複数工場間にまたがるリソース配分など、極めて複雑な制約条件下で最適な生産スケジュールを策定することが求められます。
従来のルールベースのアプローチでは、これらを網羅して対応しきれませんでした。
AVILENは、線形計画法・整数計画法・遺伝的アルゴリズムといった高度な数学的手法を導入し、局所的な解に留まらない工場全体の条件を網羅したスケジュール算出を可能にしました。
「コストの最小化」と「納期遵守率の最大化」のように、相反することの多い複数のKPIを同時に最適化するモデルを構築しています。
本プロジェクトの最大の特徴は、システムの納品ではなくOJT形式を取ったことです。
外部に頼り切るのではなく、自社の技術者が自ら最適化モデルを運用・改善できる基盤が整ったことは、今後の継続的な業務改革を支える武器になります。
複雑な現場制約を一つひとつ数理モデルに落とし込んでいくプロセスそのものを技術者同士で協働したことが、ブラックボックス化しがちなAI導入において透明性と持続可能性を担保しています。
【関連記事】【AI変革事例_製造業界】数理最適化技術を用いた生産計画の最適化プロジェクト
【Lv4】組織として内製化を回し始めた事例
1つのチームが自走できるようになっても、それが社内の一部にとどまれば全社の変革には繋がりません。
ここからは、ノウハウを組織として展開し始めた4事例を見ていきます。
事例8|製造業・設計開発部門のDX組織化

大手部品メーカーで、社内DX・AX(AI変革)推進部署を組成していたケースです。
ただし、どのようにプロジェクトのスコープを定めるべきか、どの業務を最優先すべきかというノウハウが不足していました。
AVILENは徹底した現場ヒアリングとディスカッションを重ね、本質的な課題が「設計開発部門における、過去の技術資料や設計ノウハウを効果的に検索・活用できないことによる、新規開発期間の長期化」にあると特定しました。
そのうえでRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索した情報をもとに生成AIが回答を作る仕組み)システムを実装し、顧客要求分析の自動化に取り組んでいます。
成果は2層に分かれます。業務面では、顧客要求の対応可否判断の自動化により判断精度7割と担当者の判断工数削減を実現。
組織面では、現場ヒアリングからソリューション仮説の立案、技術検証に至る一連のPoC推進ノウハウをクライアント組織へ継承しています。
これは「ある特定のAIを作れるようになった」のではなく、「どの業務に、どうAIを使うべきかを自ら判断できる状態」に引き上げたということです。
内製化のLv4を見分ける境目は、この「テーマ選定を自社でできるか」にあります。
【関連記事】【AI変革事例_製造業界】設計開発の「次の一手」を特定するAI戦略コンサルティング
事例9|金融業界・CoE構築と人材育成計画

大手金融機関のIT部門で、グループにおける生成AIツールの活用推進に苦慮していたケースです。
グループ全体の生成AI戦略が不明瞭で、技術知見も企画推進のノウハウも不足していました。
AVILENは、技術・戦略・組織の三方向から、クライアントが自走して生成AIを推進できる体制構築を支援しました。
- 法人向けChatGPT『ChatMee』の提供・運用で得た知見の共有
- 効果的なCoE組織の構築方法のアドバイス
- AIトレンドや生成AI活用事例のリサーチ・共有
- 戦略策定のフレームワーク提供
- 個別開発プロジェクトに対する技術アドバイス、簡易検証
結果、グループ全体の生成AI戦略策定に寄与し、社内チャットボット活用促進策の具体化に至りました。
さらにAI人材育成計画の立案支援により、今後のAI活用によるビジネス変革の基盤構築を実現しています。
この事例の特徴は、特定のシステム開発に留まらず、CoE組織の構築や人材育成計画といった「推進の仕組み」そのものをデザインした点にあります。
各部門からボトムアップで生まれるユースケースを、CoEが適切に集約・展開することで、一過性の導入ではない継続的な仕組みになります。
もっとも、CoEを設置すれば内製化が進むというものではありません。
横串組織を置いている企業は多いものの、結局は現場に非常に近い人が自分ごととして動かない・進まないことはよくあります。
CoEの役割は現場の代わりに動くことではなく、現場で動く人を見つけ、その人に権限と環境を与えることにあります。
【関連記事】【AI変革事例_金融業界】「AIを使う組織」への転換を全面支援。CoE構築アドバイスと人材育成計画で活用を定着
事例10|日本郵政グループ・1万人のリテラシー底上げ
日本郵政グループは、「グループ本社社員1万人のDXリテラシー向上」を目指し、2022年度からDX推進のための育成プログラムを実施しています。
「入門編」「中級編」「上級編」の3段階でプログラムを設計し、グループ横断で取り組んでいます。
この事例で最も重要なのは、パートナー選定の基準です。同グループが置いていたのは、「最終的には内製化を目指しているので、その入口として機能する研修でなくてはならない」という考え方でした。
ありきたりな研修を導入するだけでは意味がないという判断です。
そこでAVILENは、既存パッケージの提供ではなく、一から研修を設計しました。特に丁寧に作り込んだのが研修の冒頭部分です。
同グループがこれまで行ってきたことを振り返り、例えば今では当たり前になっている7桁の郵便番号も、地名が数字化・デジタル化されることで大量の情報を管理しやすくした変革だったというように、「自分たちはすでにデジタル変革を経験してきた」と思ってもらう仕掛けを随所に入れています。
また、研修実施前のアセスメントで社員のリテラシーレベルを把握し、漠然としていた「自社に必要な人材像と、その育成に必要な研修」を数値化・言語化できたことも成果の一つとされています。
内製化の前提には、まず「自社に何が足りないか」を言語化する作業が必要です。
【関連記事】【DX人材育成事例_日本郵政×AVILEN】DXをグループ共通の"当たり前"に。独自の育成プログラムで目指す、全社員のリテラシー底上げ
事例11|三菱UFJフィナンシャル・グループ・15社756名のコンペ
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、データサイエンス人材の発掘・育成を目的に、2021年度からデータサイエンスコンペを開催しています。
第三回となる「MUFGデータサイエンスコンペ2023」では、グループ内企業15社から756名が参加する大規模な取り組みとなりました。
目的は明確で、本部やDX・データサイエンス関連部署に限定せず、裾野を広げてデータサイエンスに強みを持つ人材を発掘・育成することです。
参加者のレベル差に対応するため、コンペは「Basic」と「Advanced」の2段階で設計し、初学者向けにはコンペ開催前のEラーニング学習期間を伸ばす工夫をしています。
成果として特筆すべきは、上位者の顔ぶれの変化です。2022年度の上位者はDXやデータサイエンス関連部署での業務経験者が多かったのに対し、2023年度は業務経験や大学での学習経験のない参加者のランキング入りが目立ちました。まだまだグループ内にデータサイエンス人材がいることが再認識された形です。
内製化を考えるとき、多くの企業は「人材がいない」という前提からスタートします。
しかしこの事例は、「いない」のではなく「見つけられていない」だけのケースがあることを示しています。発掘の場を用意すること自体が、内製化の重要な施策になります。
【関連記事】【AI人材育成事例_三菱UFJフィナンシャル・グループ×AVILEN】グループ15社横断、756名でデータサイエンスコンペを実施し、人材発掘・育成の裾野を拡張
11事例に共通する「内製化が進む企業」の5条件
業界も規模もテーマも異なる11の事例ですが、内製化が進んだケースには共通する5つの特徴があります。
①最初から内製化を前提に支援の座組みを設計している
内製化は、受託開発が終わったあとに後付けで始められるものではありません。
上記の事例はいずれも、契約の時点で「最終的に自社で回す」ことを前提に、支援の形態をOJTやアドバイザリーに設計しています。
日本郵政グループが研修パートナーの選定基準を「内製化の入口として機能するか」に置いていたのは、まさにこの発想です。
アスベスト検出の事例も「将来的な内製化を目指しているが社内にプロジェクト経験者がいない」という前提を最初に共有した上で、実案件を通じたOJTを選択しています。
②「成果物」ではなく「検証サイクル」を移管している
これが最も重要な条件かもしれません。完成したモデルやコードを引き渡すだけでは、次の課題が出てきたときにまた止まってしまいます。
IT業界の3Dモデル事例でAVILENが手を入れたのは、アルゴリズムではなく「評価指標の設定」と「データセットの作り方」でした。
不動産事例では、シチュエーションに応じた評価方法を指導して仮説検証サイクルを定着させています。設計開発の事例では、現場ヒアリングから仮説立案、技術検証に至るPoC推進ノウハウそのものを継承しています。
渡すべきは答えではなく、答えの見つけ方です。
③技術実装と人材育成を同時に走らせている
研修だけを先にやると、学んだ人材に実践の場がないまま時間が過ぎます。
開発だけを先にやると、成果物は残るもののノウハウが残りません。
上記のOJT事例はすべて、実際の開発プロジェクトを進めながら、そのプロセス自体を育成の場にしています。
金融業界のCoE事例でも、組織構築のアドバイスとAI人材育成計画の立案をセットで支援しました。
AVILENが技術実装と組織開発の両方を事業として持っているのは、この両輪が必要だと考えているからです。
【関連記事】単発研修から継続的成果へ ― 企業のDX人材育成を成功に導く3つのポイントと実践事例
④Quick Winで社内の納得を先に作っている
内製化は中長期の取り組みですが、中長期であることを理由に成果を後回しにすると、予算も現場の協力も得られなくなります。
IT業界の事例は3ヶ月で本番導入可能な精度に到達し、アスベスト検出の事例も3ヶ月のPoCで製品搭載レベルに達しています。
設計開発の事例では、顧客要求の対応可否判断で精度7割という実用的な数値を先に出したことが、現場の納得感を得る上で大きな意義を持ちました。
小さくても早い成果が、次の投資を引き出します。
⑤現場に近い人を、専任として置いている
前半で触れた前提条件と重なりますが、11事例を振り返っても、うまく進んだケースでは必ず「この人が動かす」という担当者が明確でした。
しかも多くの場合、その人は現場業務の全体像を把握している人です。
興味深いのは、そうした人が必ずしもAIの専門家ではないことです。専門知識の量ではなく、手を動かした経験と当事者意識が効いているということです。
内製化を進める5つのステップ
AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスとして捉えています。
具体的には以下の5ステップで整理しています。
- リテラシーをつける:データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する
- ビジョンを描く:AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする
- Quick Winを実現する:短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる
- 体制を構築する:人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える
- 活用範囲を拡大する:PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく
この5ステップを進めるうえでAVILENが大切にしている考え方は、次の3点です。
- コア部分から小さく始め、大きく広げる
- 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
- 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく
注目していただきたいのは3つ目の表現です。「外部に頼らない」ではなく「外部に頼りきらず、徐々に」というスタンスが重要です。
まとめ|内製化とは「外注をやめること」ではない
11の事例を見てきて、内製化についてのよくある誤解を一つ解いておきたいと思います。
内製化は、外部パートナーを切ることではありません。自社で判断できる領域を広げ、外部に頼るべきところを自社で選べるようになることです。
不動産の事例で、チームが支援なしで他プロジェクトを遂行できるようになったのは、AVILENとの関係が終わったからではありません。
自分たちでできることが増えた分だけ、より難しいテーマにリソースを振れるようになったということです。
そしてもう一つ。内製化は「できているか、できていないか」の二択ではなく、段階です。
いま自社がLv1にいるのであれば、次に目指すべきはLv4の全社展開ではなくLv2です。段階を飛ばさないことが、結果的には最短距離になります。
そして最後に、本記事の前提そのものについて。
生成AI・AIエージェントの登場以降、内製化の概念そのものが覆ってきています。
何を自社で持つべきかも、必要なスキルも、到達までの道筋も、数年前とは変わりました。だとすれば、既存の内製化論をなぞるのではなく、「新時代の内製化論」として整理し直すことが、いま最も重要な作業だと私たちは考えています。
自社の内製化を進めたい方へ
AVILENは、AI技術の実装と人材育成の両方を提供しています。内製化の段階に応じて、次のサービスをご用意しています。
- AI開発OJT:実務経験豊富なデータサイエンティストが、実際の開発プロジェクトを通じて技術とノウハウを移転します。定例会議・メールでの技術相談、PMとしてのプロジェクトリードに対応します。
- AI技術実装アドバイザリー(AI開発内製化支援):PM経験豊富なデータサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、ビジネスアーキテクトがPMを代行し、プロジェクトの停滞を解消します。AI開発チームの自走を支援するサービスです。
- DX/AI組織開発ロードマップ策定:目指すべき組織像を描き、社員の適性検査・人材発掘から、育成・採用計画の策定までを支援します。
「自社がいまどの段階にいて、何から手をつけるべきか」を整理するところからご相談いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。
記事の筆者

株式会社AVILEN
マーケティングチームリーダー/シニアマーケター / マーケター
立命館大学文学部を卒業後、大手地方新聞社、ビジネス系出版社での編集、広告営業職を経てブレインパッドにマーケターとして参画。2020年にDX、データ活用をテーマにしたオウンドメディア『DOORS -BrainPad DX Media-』を編集長/PMとして立ち上げ、グロース。ブランディングとプロモーションを両立したコンテンツマーケティングで成果を上げ、2022年にグループマネジャーに昇進。2025年7月よりAVILENに参画。
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