F分布の公式の確認
F分布の公式を確認しましょう。
確率密度関数 | f(z)=B(2n,2m)(mn)2n(1+mnz)−2n+mz2n−1 |
期待値 | E(Z)=m−2m |
分散 | V(Z)=n(m−2)2(m−4)2m2(n+m−2) |
ガンマ関数の確認
カイ二乗分布を用いた期待値・分散の導出に必要なガンマ関数の性質を紹介します。
性質①
Γ(a)=∫0∞ta−1e−tdt
性質②
Γ(a+1)=aΓ(a)
期待値の導出
X,Yがそれぞれ自由度n,mのカイ二乗分布に従う互いに独立な確率変数とし、Z=mYnXが自由度n,mのF分布に従うとします。
まず、Zの期待値について考えましょう。
E(Z)=E(mYnX)=E(nX)E(mY1)=nmE(X)E(Y1)
補足
上記の式変形には、独立な2つの確率変数X,Yの期待値の性質と期待値の線形性を利用しています。
期待値の性質については、「期待値とは?定義や性質を解説」をご確認ください。
次に、E(X)とE(Y1)を考えます。
Xは自由度nのカイ二乗分布に従う確率変数なので、
E(X)=n
補足
カイ二乗分布については、「カイ二乗分布のわかりやすいまとめ」をご確認ください。
次にE(Y1)を求めます。
E(Y1)=∫0∞y1f(y)dy=∫0∞y1Γ(2m)1(21)2my2m−1e−2ydy =Γ(2m)1(21)2m∫0∞y2m−2−1e−2ydy= Γ(2m)1(21)2m ∫0∞22m−2w2m−2−1e−w2dw= Γ(2m)121∫0∞w2m−2−1e−wdw
補足
4行目において、2y=wとおいています。ここで5行目のwの積分式について、ガンマ関数の性質①を利用して次のように式を変形します。
∫0∞w2m−2−1e−wdw=Γ(2m−2)
上記に加えて、ガンマ関数の性質②を利用することで、最終的にE(Y1)は以下の値となります。
E(Y1)=21Γ(2m)Γ(2m−2)=21(2m−2)Γ(2m−2)Γ(2m−2)=212m−21=m−21
E(X)とE(Y1)の値をE(Z)に代入します。
E(Z)= nmE(X)E(Y1)=nm×n×m−21=m−2m
これで、F分布の期待値を導出できました。
分散の導出
まず、Zの分散V(Z)を考えましょう。
V(Z)=E(Z2)−(E(Z))2
E(Z)は期待値の導出過程で求めたので、E(Z2)を求めます。
E(Z2)=E(m2Y2n2X2)=n2m2E(X2)E(Y21)
E(X2)は、Xは自由度nのカイ二乗分布に従う確率変数なので、
E(X2)=n2+2n
次に、E(Y21)を求めます。
E(Y21)=∫0∞y21f(y)dy= ∫0∞y21Γ(2m)1(21)2my2m−1e−2ydy=Γ(2m)1(21)2m∫0∞y2m−2−2e−2ydy=Γ(2m)1(21)2m∫0∞22m−3w2m−2−2e−w2dw=Γ(2m)1(21)2m22m−2∫0∞w2m−4−1e−wdw
補足
4行目において2y=wとおきました。また、5行目のwの積分式についてガンマ関数の性質①より
∫0∞w2m−4−1e−wdw=Γ(2m−4)
と表すことができます。上式をE(Y21)に代入し、さらにガンマ関数の性質②を用います。
E(Y21)=Γ(2m)1(21)2Γ(2m−4)=Γ(2m)1(21)22m−212m−11Γ(2m)=41(2m−2)(2m−1)1=(m−4)(m−2)1
したがって、この値をE(Z2)に代入すると
E(Z2)=n2m2E(X2)E(Y21)=n2m2×n2+2n×(m−4)(m−2)1=n(m−4)(m−2)m2(n+2)
Zの分散V(Z)は以下となります。
Var(Z)=E(Z2)−(E(Z))2=n(m−4)(m−2)m2(n+2)−(m−2)2m2=n(m−2)2(m−4)m2{(n+2)(m−2)−n(m−4)}=n(m−2)2(m−4)2m2(n+m−2)
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