中心極限定理とは
中心極限定理は、以下のように定義されます。
平均μ、分散σ2をもつあらゆる分布からの無作為標本の標本平均Xの分布はnが十分大きいとき以下の式が成立する。
limn→∞P(Zn≤z)=Φ(z)=∫∞z2π1e−2x2dx
まず、どのような分布に従うかわからない母集団から、無作為に抽出した標本をX1,X2、、、、、,Xnします。
中心極限定理とは、このnが十分に大きい時を考えるとき、以下の式が成立して良いことにする定理なのです。
Sn=X1+X2+、、、、+Xn∼N(nμ,nσ2)X=X1+X2+、、、、+Xn/n∼N(μ,σ2/n)
サイコロを例に中心極限定理を考える
上の式を見ても中心極限定理の概念を理解することは難しいので、サイコロを用いた一様分布の例を用いて考えます。
サイコロの目が出る確率は一様に61です。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|
目が出る確率 | 61 | 61 | 61 | 61 | 61 | 61 |
次に、サイコロを6回投げたときの出た目の合計を考えます。合計はどのくらいになると考えるのが自然でしょうか。
サイコロを一回投げた時の目の期待値(平均値)は、E(X)=(1+2+3+4+5+6)/6=27です。
6回サイコロを投げる試行を繰り返したとき、合計値が27×6=21になる可能性が一番高そうであると想像できます。
上記図から、サイコロを振った回数が2回以降の確率分布が正規分布のような形になっており、サイコロの目の和Snが正規分布に近似できることが感覚的に理解できるかと思います。
正規分布のままではパラメータによって数値が変動するため、標準化してより扱いやすい形にしてみましょう。
X∼N(nμ,σ2/n)
X−μ∼N(0,σ2/n)
σ/nX−μ∼N(0,1)
これにより、確率変数σ/nX−μは標準正規分布に従うことがわかるため、以下を導出できます。
n→∞limP(Zn≤z)=Φ(z)=∫∞z2π1e−2x2dx
中心極限定理のメリット
中心極限定理のメリットを、例題を解きながら見ていきましょう。
【例題】
サイコロを100回振った時、その目の和が300以上420以下となる確率を求めよ。
中心極限定理を使わない場合、300から420まで、それぞれの目の和の確率を算出していく必要があります。
中心極限定理を使えば、算出の手間を省くことができます。
【解答】
サイコロの出る目Xはμ=27、σ2=1235の離散一様分布に従う。
出る目の和Sn=X1+X2+,...,+Xnは、中心極限定理の
Sn=X1+X2+,...,+Xn∼N(nμ,nσ2)
を適用すると、
Sn∼N(350,123500)
が言える。これを標準化すると、
Sn−350∼N(0,123500)
123500Sn−350∼N(0,1)
P(300≤Sn≤420)=P(123500300−350≤123500Sn−350≤123500420−350)=P(−17.0850≤123500Sn−350≤17.0870)=P(−2.93≤123500Sn−350≤4.10)=1−0.0017−0.00002=0.9981
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