AIエージェントをどう学ぶか~業務を再設計できる人材の育て方~

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AIエージェントをどう学ぶか~業務を再設計できる人材の育て方~

本稿では、AIエージェント活用の構造を整理しながら、企業は何を設計し、どのように学ぶべきかを考えていきます。

私はこれまで、コンサルタントとしてさまざまな企業のAI活用現場に関わってきました。その中で感じているのは、次のような状況です。

生成AIは導入されているが、業務は本質的には変わっていない。

このギャップをどう埋めるのか。そこにAIエージェントの本質があると考えています。

なぜ日本は遅れているのか? “強み”が“弱み”になる構造的課題

生成AIの利用状況を表しています。

ボストン・コンサルティング・グループの調査(「職場におけるAI活用に関する意識調査2025」)によれば、生成AIを週に複数回使用する人の割合は世界平均が72%であるのに対し、日本は51%と21ポイントも低い水準にあります。
特に、経営層の利用率が高い一方、一般従業員の利用率が51%で伸び悩んでいる点は見過ごせません。
さらに、AIエージェントが業務フローに統合されている割合も、世界平均13%に対して日本は7%と、明らかな遅れをとっているのが実情です。

日本のAI導入が遅れる背景には、単なる技術的な問題だけでなく、日本企業が長年培ってきた雇用や現場のあり方そのものが関係していると考えています。

その要因は大きく3つに整理できます。

1. 長期雇用 × 低い転職率=人が動かない

日本の平均勤続年数は12.4年と、アメリカの4.1年に比べて非常に長いのが特徴です。
また、転職率を見ても、日本が年間約10%なのに対し、EUは約17%、アメリカは約27%です。

これは、人材を「市場で入れ替える」よりも「社内で育て続ける」ことが前提となっており、組織構造や業務プロセスが固定化しやすい傾向にあることを示唆しています。

2. 労働人口の減少=人が減っていく

生産年齢人口が年間約60万人という速いペースで減少しているため、2030年には現在と比べて約8割の人数で事業を継続しなければならない状況に直面します。

この差し迫った人手不足の危機に対応するため、業務の効率化はもはや「やれば良い」という選択肢ではなく、事業を維持・継続していくために「必ず取り組まなければならない」待ったなしの喫緊の課題となっています。

3. 現場の優秀さ=それでも回せてきた

そして、最も根深いのがこの3つ目かもしれません。

日本の現場は非常に優秀で、システムの不備や例外的な事態が発生しても、現場の創意工夫や調整能力で吸収できてしまいます。
その結果、「現場が頑張ればなんとかなる」という成功体験が積み重なり、人に依存する運営モデルが長らく合理的に機能してきました。

人が流動的なアメリカでは、人に依存しない「仕組み」で業務を回すのが前提ですが、日本ではこの現場力が変革の必要性を感じさせにくくしているのです。

なぜ日本は遅れをとっているのかについて表しています。



これら3つの要因が絡み合い、AIエージェントのような「これまでのやり方を根本から変える」技術に対して、無意識のブレーキがかかる構造が生まれているのだと私は分析しています。

これまで日本の“強み”であったはずの現場力や組織の安定性が、皮肉にも変革を阻む“弱み”として作用してしまっているのかもしれません。

“弱み”を“強み”へ。日本企業が目指すべき独自の協働モデル

では、私たちはこの状況をどう乗り越えればよいのでしょうか。
私が強調したいのは、海外の成功モデルをそのまま日本に持ち込もうとしてもうまくいかないということです。
なぜなら、前提となる組織構造や文化が全く異なるからです。

重要なのは、日本の構造を「弱み」ではなく、再び「強み」として捉え直すことだと私は考えています。

深い業務知見の蓄積:
人が長く組織に留まるからこそ、現場には言語化されにくい「暗黙知」や「判断基準」、イレギュラーな事態への「例外対応」のノウハウが豊富に蓄積されています。
これらは、AIエージェントを自社の業務に最適化させるための、何より貴重な“教師データ”となり得ます。

長期的な人材育成:
短期的な成果だけでなく、数年単位でじっくりと人材を育成できる文化は、AIという新しい技術を組織に根付かせ、知を継承していく上で大きなアドバンテージになります。

私たちが目指すべきは、海外事例の模倣ではなく、「日本の構造に合ったAIとの協働モデルを自ら設計する」ことです。

そして、現場に眠る深い業務知見をAIエージェントに組み込み、長期的な視点でAIを使いこなせる人材を育成していく
これこそが、日本企業ならではのAIトランスフォーメーション(AI変革)の道筋だと確信しています。

日本企業が目指す方向性について表しています。

“AIを使う”から“AIを設計する”へ:AIエージェントがもたらす変化

この「協働モデルの設計」を考える上で鍵となるのが、AIエージェントという技術の性質そのものです。

【AIエージェントとは何かをしっかり理解するための関連記事】AIエージェントとは何か?定義、仕組み、導入メリットから未来予測まで解説

AIエージェントとは何かの概要を説明しているものです。

AIエージェントは、問題解決をゴールとして一連のワークフローを遂行する自律型AIです。
ユーザーの指示に従ってコンテンツを“受動的に”生成する従来の生成AIとは一線を画します。

与えられた目標達成のために、Webブラウザや社内システム、各種アプリケーションなど複数のツールを連携させ、一連のワークフローを“能動的に”実行します。

  • 従来の生成AI:
    ユーザーが指示を繰り返しながら品質を上げる「点」の効率化(議事録作成、要約など)

  • AIエージェント:
    ユーザーの介入を最小限に抑え、目標達成のために自律的にタスクを遂行する「ワークフロー」の自動化(採用プロセス、会計処理など)


例えば、コールセンター業務では、顧客からの問い合わせに対し、AIエージェントが顧客情報や商品規約を自動で参照し、最適な回答を生成。
対応できない例外的なケースのみを人間のオペレーターに引き継ぐといった連携が可能です。

ちなみに、実際にAVILENが開発したAIエージェントのとあるデモでは、「フルネームを教えてください」という問いに苗字だけを答えた顧客に対し、AIが「苗字が田中でよろしいでしょうか」と追加で質問するなど、マニュアル通りではない柔軟な対話を実現しています。

aiagent_demo.mp3 ※別タブが開かれ、音声が流れます。

さらに重要なのは、Difyなどのノーコードツールの登場により、このAIエージェント構築のハードルが劇的に下がっていることです。
プログラミングの専門知識がなくとも、業務を熟知した現場の担当者が、自らの手でAIの振る舞いを設計できるようになります。

その結果、AIエージェントの構築という仕事の性質そのものが変わり始めています。

ノーコードのAIエージェント構築でできることを表しています。



これまでのアプローチは、PythonとLLM APIを用いたスクラッチ開発が中心でした。
主な作業は「AI基盤を作る」ことです。
モデルとの接続、API設計、データ連携、エラーハンドリング、インフラ設計など、フルスタック開発とLLMに対する深い理解が前提になります。
初期コストは高く、試作にも時間がかかり、主体はIT部門やエンジニアでした。

一方、Difyやn8nのようなツールを活用する場合、主な作業は「AIの振る舞いを設計する」ことに移ります。
何を入力し、どの情報を参照し、どの順番で処理し、どの条件で分岐し、最終的にどの形式で出力するのか。
つまり、AIそのものを作るのではなく、AIが動く業務プロセスを設計することが中心になります。

必要なスキルも変わります。
フルスタック開発力よりも重要なのは、業務設計力とプロンプト設計力です。
業務のボトルネックを特定し、分解し、構造化し、それをLLMが扱える形に落とし込む力が問われます。

初期コストは低く、試作速度は圧倒的に速いからこそ、主体はIT部門から業務部門へとシフトします。

ここで本質的に起きている変化は、「AIを作る仕事」から「業務を設計する仕事」への転換です。

従来は、業務部門が要件をまとめ、IT部門に依頼し、数ヶ月後にシステムが出来上がるという流れでした。
しかしノーコードAIエージェントの登場によって、業務を最もよく知る人が、自らプロトタイプを作り、改善し、再設計できる環境が生まれています。

これは単なる開発手法の違いではなく、組織構造と意思決定のスピードを変えるインパクトがあります。

業務を知る人がIT部門に丸投げせず、自分たちの手で業務を組み替えられる状態をつくれるかどうかが、これからのAI活用の分水嶺になります。

ノーコードAIエージェントは、技術の民主化というよりも、業務設計の責任を現場に取り戻すための装置です。
AI時代に求められるのは、より高度なプログラミング能力ではなく、「どの業務を、どの構造で、どこまでAIに委ねるのか」を設計できる力なのです。

AIエージェント時代に求められる「新たな役割」とは

複数のAIエージェントが協働する時代において、私たち人間の役割は大きく変わります。
単純なタスクをこなす役割はAIエージェントに移行し、人間にはAIエージェントで構成されたチーム全体を監督し、適切な指示を与え、非常時に介入する、いわば「上司」や「監督者」としての役割が求められるようになります。

将来的には、様々な専門性を持つAIエージェントたちを取りまとめる「オーケストレーション・エージェント」のような存在が登場し、人間はそのさらに上位の管理者として、より戦略的な意思決定に集中することになるでしょう。

したがって、企業が今、優先的に育てるべきは、単なる「AIを使う人」ではないと考えます。

自社の業務を構造的に捉え、「どこをAIに任せるか」を判断し、AIエージェントとの協働チームを設計できる人材です。
具体的には、以下のような役割を担う方々が、その中心となるでしょう。

業務改善・DX推進担当: 部署を横断して業務プロセス全体を俯瞰し、AIを組み込むべきポイントを設計する。

企画・間接部門 (人事・総務など): 自部門の定型業務をAIエージェントに任せ、より創造的な仕事にシフトするための仕組みを再設計する。

情シス/IT企画: 現場部門が構築するAIエージェントに対し、「ノーコードツールで十分か、あるいは本格的な開発が必要か」を見極め、技術的なガバナンスを担う。

変化への第一歩を踏み出すための「AIエージェント研修」

では、こうした「業務を設計できる人材」をどのように育成すればよいのでしょうか。
重要なのは、いきなり高度な開発を目指すことではありません。

まずはAIエージェントの全体像を体系的に理解し、そのうえで実際に手を動かし、「業務を自分たちの手で再設計できる」という感覚を掴むことです。

AVILENが提供する「AIエージェント研修」は、そのファーストステップに特化して設計されています。

AIエージェント研修の全体設計を表しています。

座学編:構造を理解する

本研修は、大きく「座学編」と「実践編」の二部構成です。

座学編では、

  • AIエージェントとは何か
  • 従来の生成AIとの違い
  • 活用事例
  • 内部構造とタイプの違い
  • 今後のトレンド


といった内容を体系的に整理します。
単なるツール紹介ではなく、「なぜAIエージェントが業務を変えるのか」という構造理解を重視しています。

実践編:業務を“設計”する

続く実践編では、ノーコードツールであるDifyを用いて、段階的にAIエージェントを構築します。

目的は、ツール操作を覚えることではありません。
業務を分解し、AIに実行させる“設計力”を身につけることです。

まずはツールの基本構造を理解し、シンプルなチャットボット形式のAIエージェントを構築します。

ここで、プロンプト設計やナレッジ参照設定など、AIの振る舞いを定義する基礎を体験します。

その後、条件分岐や複数ステップ処理を組み込んだワークフロー型のAIエージェントへと発展させます。

単なる対話ではなく、入力→判断→処理→出力という業務フローそのものを設計する演習です。
実践編を終える頃には、 「生成AIをチャットとして利用する」状態から 「業務アプリとして設計できる」状態へとステップアップします。

研修成果:自社業務に紐づいたプロトタイプを残す

本研修の最大の特徴は、 「受講者自身の業務課題を題材にアプリを構築する」点にあります。

研修中のワークでは、

①業務課題の選定
②改善アプリの構築


を行い、実際に使えるプロトタイプを作ります。

その結果、研修終了時には、単なる知識ではなく、 “自社業務に紐づいたAIエージェント案”が成果物として可視化されます。

多くの研修は「学んで終わる」構造になっていますが、本研修では、業務改善のアイデアとその試作品が組織内に蓄積されます。
つまり、研修がそのまま小さなPoCの集合体になるのです。

検証環境サポート:即実践を可能にする仕組み(オプション)と価格体系

さらに、研修中に即実践を可能にするための「検証環境サポート」も用意しています(オプション)。

通常、ノーコードツールを社内で使うには、

  • API契約
  • セキュリティ審査
  • 導入承認フロー
  • 環境構築


といったハードルがあり、環境整備だけで数週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。

そこで、研修中の実践を後押しするための「検証環境サポート」(オプションプラン)もご用意しています。
弊社クラウド環境上での検証環境構築の支援に加え、受講生アカウント利用のサポート、利用ガイド/操作マニュアルの提供を行います。
本番導入を前提としたものではなく、研修内で「まず試せる状態をつくる」ことを目的とした環境です。
研修期間中(2ヶ月)、最大300名まで利用可能で、研修における学習・理解・検証を目的とした環境としてご活用いただけます。

重要なのは、本番導入を前提とした環境ではなく、 「試せる状態をつくる」ことに価値があるという点です。

AIエージェント活用は、頭で理解するだけでは進みません。
実際に触れ、作り、試し、失敗するプロセスが不可欠です。

また、価格体系もシンプルです。eラーニング形式では、全コース(座学+実践)で1名あたり38,500円(税込)。
座学のみ、実践のみの受講も可能です。

その他、具体的な価格体系を知りたい方は、以下の資料からご確認いただけます。

AIエージェント研修 資料ダウンロード

AIエージェント研修の資料ダウンロードのサムネイルです。

最後に

AIエージェントの時代が到来していますが、単に新しいツールを導入する話ではありません。
仕事の設計権を誰が握るのかという話です。

業務を知る人が、自ら業務を再設計できる組織へ。
その第一歩として、まずはAIエージェントの構造を理解し、実際に1つ、自分の業務で作ってみる。その体験が、組織変革の出発点になります。

より詳しい情報や導入のご相談については、ぜひお気軽にお問い合わせください。

AVILEN AIエージェント研修