【AI変革事例_製造業界】異物混入を『入る前』に防ぐ。AIが清掃の正解を判定する自動監督システム

食品工場において、毛髪などの異物混入は絶対に起こしてはならない事象です。
多くの現場では、入室前の粘着ローラ清掃によって作業着のホコリや毛髪を除去していますが、その清掃が本当に行われたかを確認しているのは、人の目です。
24時間稼働・多国籍化が進む現場では、言葉の壁や時間帯によって管理にばらつきが生じます。また、監督人員の配置にもコストがかかります。
本記事では、この清掃工程を録画データの解析によってAIが自動判定し、AIが「OK」を出さなければクリーンルームに入れない仕組みを構築した事例をご紹介します。
24時間稼働の現場で300名を監督し、年間1,000万円以上のコスト削減を実現。約2年間にわたり継続稼働しています。
目次
監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CTO 兼 D&Aソリューション事業担当 / データサイエンティスト
広島大学大学院卒業。コンピュータビジョン、機械学習、ディープラーニング領域を専門とするデータサイエンティスト。複数の国際学会へ査読付き論文の採択実績を持つ。2021年、AVILENに参画。AIソリューション事業の最年少マネージャーとしてIPOをはじめとする事業拡大、SaaS事業の立ち上げからグロースを牽引。データ・AI・デジタルを軸としたビジネスモデルの再構築とビジネスプロセスの根本的な変革を、広範な業界の企業に対して支援を行う。
課題|目視の監督では、異物混入リスクを抑えきれない
製造現場に入る際、粘着ローラを用いて作業着に付着したホコリや毛髪を除去する工程を異物混入対策として実施していますが、清掃意識が低い従業員も多く、清掃状況を監督をする人員の配置にコストがかかっていました。
また、目視による確認のため、全身を清掃できているのか正しく判定できていなかった点も課題です。
特に、24時間稼働する工場において多国籍な従業員が従事する環境では、言葉の壁や時間帯による管理のばらつきが生じやすく、人手によるマネジメントや統制には限界がありました。
毛髪の混入といったコンタミネーションは絶対にあってはならないため、より確実で客観的な監督体制が求められていました。
ソリューション|AIが清掃を判定し、入室を物理的に制御する
AIが監督者に代わって清掃動作を厳密に解析・判定し、物理的な入場制限と連動させる仕組みを構築しました。
- AIによる即座の清掃判定システムの構築
- 清掃状況をカメラで録画し、全身の決められた箇所を、正しい動作と秒数で行えているかをAIが即座に判定します。
- 清掃状況をカメラで録画し、全身の決められた箇所を、正しい動作と秒数で行えているかをAIが即座に判定します。
- 清掃監督およびアラートの安定化
- 全箇所の清掃が完了し、AIが「OK」を出さない限りクリーンルームに入れない仕組みを導入。これにより、清掃の形骸化を物理的に防ぎます。
- AIが監督を代替することで、24時間均一な基準でアラートを出し、作業員自身の異物除去清掃の品質を向上させました。
実務現場と徹底した仕様のすり合わせを行うことで、現場で真に機能するシステムを実現しています。
成果|年間1,000万円以上の削減と、24時間・300名の監督
本システムの導入により、衛生管理レベルの劇的な向上と大幅なコストダウンの両立に成功しました。
- 監督コストの劇的な削減
- 清掃監督をAIが代替したことで、人件費を抑え、年間1,000万円以上のコスト削減を実現。
- 清掃監督をAIが代替したことで、人件費を抑え、年間1,000万円以上のコスト削減を実現。
- 24時間体制での厳格な管理を実現
- 24時間稼働の現場で300名を休むことなく監督し、年間5万回以上の利用実績を積み上げています。約2年間にわたる継続導入が、システムの安定性と実用性を証明しています。
本システムは清掃状況をカメラで録画し、判定と紐づけて保存します。
そのため、「誰が・いつ・どの箇所を・どのくらいの時間清掃したか」という記録が、運用の副産物として自動的に蓄積されます。
異物混入対策では、対策を実施していること自体に加え、それを客観的な記録として示せるかも問われます。
人による確認では記録が残りにくい領域を、仕組みとして担保できる点は、本事例のもうひとつの価値といえます。
まとめ・考察|異物混入対策は「見つける」だけでなく「出さない」
本事例の特徴は、AIを「分析」ではなく「現場の規律を担保する実効的な門番」として活用した点にあります。
多様な背景を持つ従業員が交代制で働く現場において、共通の厳格な基準をAIで自動化したことは、管理統制の難しさを技術で解決した好例と言えます。
今後は、ここで蓄積された年間数万回におよぶ清掃データを分析し、特に不備が出やすい箇所を特定して教育プログラムをパーソナライズ化するなど、さらなる品質向上のサイクルへ繋げることが期待されます。
この「デジタル監督者」の知見は、清掃以外の安全確認動作など、他の重要工程へも展開可能な、製造業の標準モデルとなる可能性を秘めています。
AVILENでは、このような異物混入対策におけるAI活用のご支援が可能です。
「うちの現場でも同じ仕組みが作れるか」「どこから検討すればよいか」といった段階からお気軽にどうぞ。
https://avilen.co.jp/ai-dev/saas/clean-ai-manager/form/contact/
AVILENが考えるAI変革とは
AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスと捉えています。
そのため、AI活用はいきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要だと考えています。
AI導入は「5つのステップ」で進める
AVILENでは、AI変革を以下の5ステップで整理しています。
- リテラシーをつける
データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する - ビジョンを描く
AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする - Quick Winを実現する
短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる - 体制を構築する
人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える - 活用範囲を拡大する
PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく
AI変革を支える3つの考え方
この5ステップを進めるうえで、AVILENが大切にしている考え方は次の3点です。
- コア部分から小さく始め、大きく広げる
- 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
- 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく

本事例の位置づけ
本記事で紹介する取り組みは、こうしたAI変革のプロセスの中で設計された一つの実践例です。
AVILENは、「AIを作る会社」ではなく、AIを使って企業の変革を前に進めるパートナーでありたいと考えています。
記事の筆者

株式会社AVILEN
マーケティングチームリーダー/シニアマーケター / マーケター
マスコミ業界で編集・広告営業に従事後、ブレインパッドにマーケターとして参画。2020年、DX・データ活用をテーマとするオウンドメディア「DOORS -BrainPad DX Media-」を編集長として立ち上げ、メディアの成長を牽引。2022年にグループマネージャーに昇進。2025年7月よりAVILENに参画し、マーケティング戦略の立案からコンテンツ企画・制作、施策実行やAIエージェントを活用したマーケティング推進を統括。




