正規分布の3つの性質とその証明

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正規分布の性質

正規分布には代表的な3つの性質があります。

性質1:確率変数aX+bが従う正規分布

確率変数XXが正規分布N(μ,σ2)N(μ,σ^2)に従うとき、aX+baX+bは正規分布N(aμ+b,a2σ2)N(aμ+b,a^2σ^2)に従う。

性質2:標準化による標準正規分布

性質1を用いて、Z=XμσZ = \frac{X-μ}{σ}と変換すると、ZZは平均0、分散1の正規分布に従う。これを特別に標準正規分布という。

また、この変換を正規分布の標準化と呼ぶ。

性質3:正規分布の再現性

確率変数XXYYが独立に正規分布N(μ1,σ12)N(μ_1,σ_1^2),N(μ2,σ22)N(μ_2,σ_2^2)にそれぞれ従うとき、X+YX+Yも正規分布に従う。

また、その分布はN(μ1+μ2,σ12+σ22)N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)となる。この性質を正規分布の再生性という。

性質1:確率変数aX+bが従う正規分布

【性質】

確率変数XXが正規分布N(μ,σ2)N(μ,σ^2)に従うとき、aX+baX+bは正規分布N(aμ+b,a2σ2)N(aμ+b,a^2σ^2)に従う。

【証明】

正規分布の確率密度関数を用いる。

XN(μ,σ2)X\sim N(\mu,\sigma^2) のとき,確率密度関数は以下となる。

f(x)=12πσ2exp[(xμ)22σ2]f(x) = \frac{1}{\sqrt{2πσ^2}}\exp{[-\frac{(x-μ)^2}{2σ^2}]}

ここからY=aX+bY=aX+bによるYの確率密度関数g(y)g(y)を求める。

変数変換 y=ax+by=ax+b を考えると、以下となる。

x=ybax = \frac{y-b}{a}

g(y)=f(x)dxdyg(y)=f(x)\frac{dx}{dy}

また、 dxdy=1a\frac{dx}{dy}=\frac{1}{a} であることから、

g(y)=f(x)dxdy=12πσ2exp[(ybaμ)22σ2]×1a= 12πa2σ2exp[(y(aμ+b))22a2σ2]\begin{equation*}\begin{split}g(y)&= f(x)\frac{dx}{dy} \\\\ &= \frac{1}{\sqrt{2πσ^2}}\exp{[-\frac{(\frac{y-b}{a}-μ)^2}{2σ^2}]}×\frac{1}{a}\\\\ &=  \frac{1}{\sqrt{2πa^2σ^2}}\exp{[-\frac{(y-(aμ+b))^2}{2a^2σ^2}]}\end{split}\end{equation*}

となる。

このg(y)g(y)の密度関数は、平均 aμ+baμ+b ,分散a2σ2a^2σ^2に従う。

よって、確率変数XXが正規分布N(μ,σ2)N(μ,σ^2)に従うとき、aX+baX+bは正規分布N(aμ+b,a2σ2)N(aμ+b,a^2σ^2)に従う。

性質2:標準化による標準正規分布

【性質】

性質1を用いて、Z=XμσZ = \frac{X-μ}{σ}と変換すると、ZZは平均0、分散1の正規分布に従う。これを特別に標準正規分布という。また、この変換を正規分布の標準化と呼ぶ。

【証明】

標準化の証明は「正規分布を標準化して標準正規分布にする方法」をご確認ください。

性質3:正規分布の再生性

【性質】

確率変数XXYYが独立に正規分布N(μ1,σ12)N(μ_1,σ_1^2),N(μ2,σ22)N(μ_2,σ_2^2)にそれぞれ従うとき、X+YX+Yも正規分布に従う。また、その分布はN(μ1+μ2,σ12+σ22)N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)となる。この性質を正規分布の再生性という。

【証明】

互いに独立な確率変数XN(μ1,σ12)X~N(μ_1,σ_1^2)YN(μ2,σ22)Y~N(μ_2,σ_2^2)をおく。

XXYYの積率母関数は、それぞれ以下で表される。

mX(t)=eμ1t+σ12t22m_X(t) = {\mathrm{e}}^{\mu_1 t+\frac{{\sigma_1}^{2}t^2}{2}}

mY(t)=eμ2t+σ22t22m_Y(t) = {\mathrm{e}}^{\mu_2 t+\frac{{\sigma_2}^{2}t^2}{2}}

従って、X+YX+Yの積率母関数(モーメント母関数)は、以下で表される。

mX+Y(t)=mX(t)mY(t)=eμ1+σ12t22eμ2t+σ22t22=e(μ1+μ2)t+(σ12+σ22)t22\begin{equation*}\begin{split}m_{X+Y}(t) &= m_X(t)m_Y(t) \\\\ &= {\mathrm{e}}^{\mu_1 +\frac{{\sigma_1}^{2}t^2}{2}}{\mathrm{e}}^{\mu_2 t+\frac{{\sigma_2}^{2}t^2}{2}} \\\\ &= {\mathrm{e}}^{(\mu_1+\mu_2)t+\frac{({\sigma_1}^{2}+{\sigma_2}^{2})t^2}{2}}\end{split}\end{equation*}

これは、N(μ1+μ2,σ12+σ22)N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)の積率母関数である。

積率母関数は積率母関数の一意性により確率分布と1対1対応するので、X+YX+Yの分布はN(μ1+μ2,σ12+σ22)N(μ_1+μ_2,σ_1^2+σ_2^2)となる。

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カテゴリ: 正規分布

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