九電グループでAIをリードする「Qsol-Lab」に 聞く、AI人財育成とAIソリューション開発の推進
九電グループでICT領域のソリューション提供を事業として行っている「 Qsol株式会社」(以下、Qsol)は、中期経営方針(FY2022〜2026)のDX取り組み指針として、5つの方針を掲げている。
(参照:https://www.qdenbs.com/company/DX.html)
これらの方針のうち「外販の拡大」は、AIやBIなどのデジタル技術を活用したソリューションをお客様に提供し、社会・産業の変革と持続的な発展に貢献することを目的としている。この取り組みをメインで推進しているのが、「Qsol-Lab」だ。
今回は、Qsol-Lab AIテクニカルセンターのグループ長の豊永 泰史さんに、Qsol-Labが取り組むAIソリューション開発と、AI人財育成の方針をお聞きした。
また、AVILENのE資格講座を受講し、E資格2022#2に合格した姜 敏さんと、匹田 翔大さんにはE資格合格体験談をお聞きした。
写真左から、豊永 泰史さん、匹田 翔大さん、姜 敏さん
九電グループのAI推進役「Qsol-Lab」のミッションとは?
– Qsol-Labのミッションと、豊永さんのグループ内での役割を教えてください。
豊永さん
Qsolは九電グループのシステム開発や運用保守を担う会社です。その中でQsol-Labは、ICT等を活用したアイデア・ビジネスの創出に繋がる技術研究、また、新技術を通じた発想力及び想像力を持った人財(“財”は財産の意)の育成を目的に、技術者の研究開発や交流の拠点として活動しています。
具体的には、AI、XR、IoT、ブロックチェーンなどの新技術研究とこれらの技術を活用したソリューション創出、またグループ内外の企業、自治体、大学のHubとしての連携機能を持っています。
私の役割は、Qsol-Labグループのマネジメントと新技術を活用したビジネスプランニングです。ビジネスプランニングでは、グループ内に蓄積しているデータの活用の提案やパートナー企業のサービスと組み合わせたソリューションの企画を行っています。
– Qsol-Labでは、どのようなAIソリューションを開発・提供しているのですか?
豊永さん
現在、九電グループでリリースされている4つのソリューションのAIモデル開発をQsol-Labが担っています。
今回、代表例としてご紹介する各ソリューションのプレスリリースはこちらです。
・ドローン×Lidarデータ×AI:森林資源見える化サービス
・部分放電×AI:電力ケーブル劣化診断「PDLOOK」
・衛星×SARデータ×AI:海氷検知サービス(※開発中)
– 今後、Qsol-Labで取り組みたいことを教えてください。
豊永さん
Qsol-Labで開発したAIモデルを現場で活用できる形で横展開する仕組みを構築して、AIソリューション活用を加速させていきたいです。
また、現在は主にQsol-LabがAI活用のビジネスプランニングをしていますが、ゆくゆくは開発部門全体にこの文化と技術が広がり、DXを推進する一つの手段としてそれぞれの部署でAI推進ができることが理想です。ですので、Labでは、全体的な技術支援や、これから増えていくであろうAI案件に効率的に対応できるよう、Labの体制整備とMLOps導入を進め、AI開発を推進していきたいです。
Qsol-LabのAI人財育成
– AIモデル開発をQsol-Labで内製化するにあたって、どのような人財育成を実施していますか?
豊永さん
E資格を通じてAIエンジニアリングの基礎知識をつけたあと、上記の案件にアサインするなどして、OJTで実践力を磨いていくような流れです。アサインする前は実際の案件の開発ノウハウを教材として活用し、開発の事前訓練も行います。
– AIエンジニアリングの基礎学習に「E資格」を選んだ理由と、JDLA認定プログラムでAVILENを選んだ決め手を教えてください。
豊永さん
E資格は、AIエンジニアリングに必要な知識が体系的に整理されているとともに、AI資格として一番知名度と権威性があるため、人財育成の一環として取得を推奨しています。
JDLA認定プログラムとしてAVILENのE資格講座を選定したのは、文系出身でも基礎講座からフォローがあることやこの講座を受講したメンバの合格実績(現在4名、下期は2名受験予定)と動画コンテンツ・ハンズオン演習の質と評判が良かった事が大きな理由です。今後もE資格者の増やしていくためにこの講座を活用させていただこうと思っています。
E資格2022#2合格者インタビュー
ここからは、入社二年目で、E資格2022#2に合格したQsol-Labの姜さん、匹田さんに合格に向けて取り組んだことをお聞きする。
姜 敏さんのプロフィール
新入社員として2021年4月にQsolに入社。文系出身で、IT知識やプログラミング未経験の状態から、入社後、さまざまなIT資格に挑戦し、今回E資格2022#2に合格。
業務として、上述の「森林資源見える化サービス」において、AIモデルの評価検証を行う。
匹田 翔大さんのプロフィール
新入社員として2021年4月にQsolに入社。大学時代は理系の学部に所属し、講義や研究で数・統計・プログラミング・機械学習・深層学習を一通り経験。業務でもAIサービスの開発に携わり、CNN・GRU・LightGBM・GANといったモデルや、学習・推論処理の実装を経験。
IT初心者でもE資格合格!ディープラーニングの活用には原理原則の理解が必要 - 姜 敏さん
– ITやプログラミング未経験で入社し、さまざまな資格に挑戦したとのことですが、E資格取得前にどんな資格を取得しましたか?
姜さん
2021年4月に入社してから、2021年12月に基本情報技術者試験、2022年1月にPythonエンジニア認定基礎試験、2022年3月にG検定とPython3 エンジニア認定データ分析試験を取得しました。
– かなりハイペースで取得していますね!その他、E資格講座受講に必要な前提知識はどのようにキャッチアップしましたか?
姜さん
数学の線形代数、行列など大学数学の分野は知識がなかったので、AVILENの基礎講座や書籍で勉強しました。
機械学習に関しては、2021年に九州先端科学技術研究所の「ふくおかAI・DXスクール」で実施していたAVILENのAI開発者研修や基礎講座で勉強しました。
– E資格の学習はどのように進めましたか?
姜さん
2022年4月に学習をスタートして、2022年7月にE資格講座を修了しました。
基礎講座を3月から5月に取り組んで、6月から7月にE資格講座の学習を進めました。
平日は3〜4時間、休日は6時間程度、E資格の学習に費やしました。
– 学習を進めるにあたって工夫した点はありますか?
姜さん
修了後、E資格本試験までの対策として、E資格のシラバスをベースにAVILENの講座資料・書籍・WEBサイトの情報を整理してノートにまとめました。また頻出の数式は暗記するくらい理解を深めました。
– AVILENのE資格講座で良かったポイントを教えてください。
姜さん
講義動画が初心者にも分かりやすく、講義資料もE資格で問われる知識を体系的に整理してあって良かったです。
コーディングの演習では、講師からのフィードバックやヒントをもとに、自分で考えてコードを書くことができ、力が付いたと思います。
また、自分が間違った問題をまとめて確認できる機能が学習ツールにあって、とても便利でした。
– E資格合格後に感じている変化や、今後取り組みたいことを教えてください。
姜さん
実務でパラメータ探索の最適な手法を提案するなど、E資格で学んだことを活かしながら自信をもって業務に取り組むことができています。
次のステップとして、AWS Machine Learningの認定資格を取得したいと考えています。
また、実務に関しては、昨年は画像解析に取り組んだので、GRU、Light GMBなどをつかって分類問題など、別のタスクにも取り組んでいきたいです。
– E資格を目指して学習中の方や、取得を検討している方へメッセージをお願いします。
姜さん
学習を進めている方へは、自分なりのスケジュールを作成し、時間を意識して学習を進めてほしいと伝えたいです。また、復習をするときは体系的に知識を整理するのがおススメです。私の場合は、シラバスをベースにAVILENの講義・WEBサイト・書籍の内容をノートにまとめましたが、ノートまとめが手間に感じる方は、AVILENの講義、問題の復習は学習ツールで知識を整理していくのがよいと思います。
E資格の取得を迷っている方へは、資格を取得するかどうかに関わらず、学び続けることが大事であると伝えたいです。
ディープラーニングはほぼ全ての産業に影響を与えています。この技術を活用して実社会の課題を解決するには、まずはその原理原則の理解が必要です。
E資格はディープラーニングの理論と実装スキルを問うので、学習の過程で知識が身に付きます。IT初心者の私でも合格できたので、ディープラーニングを学びたい方は、ぜひチャレンジしてほしいです。
AI開発プロジェクトを牽引できる存在に - 匹田 翔大さん
– ある程度AIエンジニアリングの知識を保有しているようですが、E資格講座の学習はどのように進めましたか?
匹田さん
本格的に学習をスタートしたのが2022年5月からで、2022年7月中旬にE資格講座を修了しました。
1週間程度、基礎講座で前提知識の復習をし、2か月程度をE資格講座の学習に充てました。
– E資格講座の修了要件で、躓いた点はありますか?
匹田さん
コーディング演習に関しては、基本的には、ノートブックの説明→ゼロから作るディープラーニング→ネット→講師のヒントの順番で参考に実装を進めました。実装に躓いた箇所は、動作はするが結果が間違っているパターンで何度か経験しました。多くの場合は細かなミスや、ちょっとした勘違いなどでした。あまり自分で抱えこまずに講師に質問してヒントを頂くことで乗り切ることができました。
プロダクト開発演習では、VisionTransformer(ViT)を使用して、画像の行動分類を行いました。
まず、どのようなタスクにするか、データをどこから取得するか、前処理をどうするかなど考えることが多く、準備に苦労したと感じています。また、思ったほど精度がでなかったため、E資格講座で学んだファインチューニングや転移学習など、データ数が少ないときに有効な手段をとることで精度向上することができました。
ただファインチューニングして精度を向上させるだけでは面白くないので、自分なりにViTの構造を改良して精度向上を試みましたが、こちらは上手くいかず少し悔しさが残るプロダクト演習になってしまいました。
しかし、このおかげでTransformerについての勉強にもなり、試験本番でTransofrmer関連の問題もいくつか出題されたので、結果良かったのかなと感じています。
– AVILENのE資格講座で良かったポイントを教えてください。
匹田さん
深層学習の基礎的な理論から、メジャーなモデルの実装まで幅広く網羅していると感じました。
サポートに関しては、質問に対する回答のレスポンスが早く、質問しやすい環境でした。
また、学習ツールの機能で、「間違った問題」に絞る機能など、学習しやすいように工夫されていました。
本番試験の対策問題では、分類、セグメンテーション、物体検出などの様々なモデルと特色を勉強したおかげで、実際の業務でUnetを使用した際にスムーズに理解することができました。
– E資格合格後に感じている変化や、今後取り組みたいことを教えてください。
匹田さん
業務で新たなモデルを調査する際、論文やソースコードから、以前よりもスムーズに理解できるようになりました。
また、E資格を取得したことで、周囲からもAIの知識を持っている人と認識されるようになったと感じますし、今後のAI・データサイエンス・ITに関する資格取得へ向けたモチベーションが向上しました。
今後は、E資格の勉強で得たスキルを活かして、AIを活用した案件でプロジェクトを牽引できる存在を目指すとともに、AIなどの新技術を活用したソリューションの開発や研究に貢献していきたいです。
– E資格を目指して学習中の方や、取得を検討している方へメッセージをお願いします。
匹田さん
コーディング演習では、ディープラーニングの基礎からメジャーなモデルの実装まで幅広く学べますが、E資格講座の学習で大切なことは、課題をクリアすることではなく、きちんと「理解」することだと感じました。
ですので、プログラムを穴埋め箇所だけでなく一連の流れで学んでいくと、理解が深まり、試験対策だけでなく、実際の業務にも役立つ知識になると思います。
また、課題やテストの量は少なくないので、計画的に学習を進めていくことをお勧めします。継続的に一定のペースというよりも、短期集中を複数回に分けて学習すると、楽しさと達成感も得やすいのかなと感じました。
資格取得を迷っている方の中には、費用的負担や難しそうなイメージにより躊躇している人が多いのではないでしょうか?
しかし、AVILENのE資格コースでは、費用に見合った講義と演習、手厚いサポートがありますので、AIについて強い興味がある方や、仕事でAIの案件に携わっている方などはE資格取得にチャレンジすることをお勧めします。
おわりに
ここまで、Qsol-Labでソリューション企画とマネジメントを担当する豊永さんと、AVILENのE資格講座を受講してE資格に合格した姜さん、匹田さんにお話しをお聞きした。
Qsol-Labには、若手の人財育成体制に加えて、育成後に実際の開発案件を経験できる環境があるのが魅力的だ。今回、E資格に合格した姜さん、匹田さんを中心に、QsolのAIソリューション創出や技術研究が加速することを期待したい。
記事の筆者
AVILEN編集部
株式会社AVILEN