【AI変革事例_医療業界】医薬品の安定供給を支えるAI需要予測システム

【AI変革事例_医療業界】医薬品の安定供給を支えるAI需要予測システム

医薬品の需要予測精度を大幅に改善し、安定供給を実現したAI開発事例です。
約2万品目をAIが自動分類し、商品ごとに最適な予測モデルを適用することで、予測誤差を36%改善。
3ヶ月先の中期予測にも対応し、欠品や過剰在庫の削減と業務の属人化解消を同時に実現しました。

監修者

監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CTO 兼 D&Aソリューション事業担当 / データサイエンティスト

広島大学大学院卒業。コンピュータビジョン、機械学習、ディープラーニング領域を専門とするデータサイエンティスト。複数の国際学会へ査読付き論文の採択実績を持つ。2021年、AVILENに参画。AIソリューション事業の最年少マネージャーとしてIPOをはじめとする事業拡大、SaaS事業の立ち上げからグロースを牽引。データ・AI・デジタルを軸としたビジネスモデルの再構築とビジネスプロセスの根本的な変革を、広範な業界の企業に対して支援を行う。

課題

医薬品卸売企業では、大手ベンダー製の需要予測機能を含む在庫管理システムを導入していましたが、その予測精度の低さが課題となっていました。
実際の需要と予測値に乖離が生じることで、命に関わる医薬品の欠品や、過剰在庫による廃棄処分が発生。これらが直接的なコスト増加や顧客満足度の低下を招く要因となっていました。

また、システムが導き出す予測値の信頼性が低かったため、現場では担当者が長年の経験に基づいて数値を個別に補正する作業が常態化していました。
この補正作業は特定のベテラン社員に依存した属人的な業務であり、業務効率の悪化を招いていることも大きな問題でした。

ソリューション

AVILENは、汎用的な既存システムの限界を打破するため、クライアントの業務特性に特化した独自のカスタマイズ予測モデルを構築しました。

  • 高度なハイブリッド時系列予測モデルの開発
    • 統計的アプローチを得意とする「Prophet」と、複雑なパターン抽出に長けた機械学習アルゴリズム「LightGBM」を組み合わせたハイブリッドモデルを構築しました。
    • 周期性のある商品や非周期的な商品など、医薬品ごとの特性に応じて予測手法を最適化しています。
  • 商品分類アルゴリズムによる自動化
    • 約2万種類に及ぶ膨大な商品をAIが自動で分類し、個々の品目に適した予測手法を自動選択する仕組みを導入しました。
    • これにより、予測が困難な商品の特定と、それに対する個別の対策立案が可能になりました。
  • 多角的な精度評価と中期予測の実現
    • 納品数誤差、MAPE、RMSEといった複数の指標を用いて、多角的に予測精度を検証・評価する体制を整えました。
    • 目先の需要だけでなく、3カ月先までを見据えた中期予測を実現し、計画的な運用を支援しています。

成果

独自の予測モデルを導入した結果、需要予測の精度は現行システムと比較して予測誤差が36%改善され、在庫の適正化が大幅に進展しました。
この改善により、指定した30商品だけでも大きな欠品削減効果が見込まれています。

さらに、このAIシステムは3カ月先までの中期予測を可能にし、将来の需要変動に応じた戦略的な在庫戦略を可能にしました。

実務面での最大の成果は、大幅な工数削減と組織体制の変革です。それまで特定の個人に依存していた予測補正作業がAIにより自動化され、属人化していたノウハウがシステムへ集約されました。
これにより、誰でも安定して高精度な発注ができる、持続可能で強固な供給体制が確立されました。

まとめ・考察

本事例の特筆すべき点は、パッケージ化された既存システムの限界を、自社専用のカスタマイズモデルによって突破し、実利に直結させたことにあります。

特に、約2万点という膨大な商品群をAIが自動分類し、最適なアルゴリズムを割り当てる仕組みを構築したことは、大規模なサプライチェーンを持つ企業において非常に再現性の高いアプローチです。
これは、単なる「予測精度の向上」に留まらず、膨大なオペレーションそのものをAIが自走させる「AI変革」の好例といえます。

この取り組みは、欠品や廃棄の削減を通じて、ESG評価の向上や社会的な安定供給という大きな価値にも寄与します。
今後はこの予測データを活用し、物流コストの最適化や、パートナー企業との需要情報連携など、より広域なバリューチェーンの変革へと発展していくことが期待されます。

AVILENが考えるAI変革とは

AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスと捉えています。
そのため、AI活用はいきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要だと考えています。

AI導入は「5つのステップ」で進める

AVILENでは、AI変革を以下の5ステップで整理しています。

  1. リテラシーをつける
    データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する

  2. ビジョンを描く
    AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする

  3. Quick Winを実現する
    短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる

  4. 体制を構築する
    人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える

  5. 活用範囲を拡大する
    PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく

AI変革を支える3つの考え方

この5ステップを進めるうえで、AVILENが大切にしている考え方は次の3点です。

  • コア部分から小さく始め、大きく広げる
  • 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
  • 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく
AIトランスフォーメーション(AIX)のポイントについて解説しています。

本事例の位置づけ

本記事で紹介する取り組みは、こうしたAI変革のプロセスの中で設計された一つの実践例です。
AVILENは、「AIを作る会社」ではなく、AIを使って企業の変革を前に進めるパートナーでありたいと考えています。

開催予定/配信中のウェビナー

AI変革で成果を出す企業は何を先に決めているのか?AI実装による人材紹介の高度化