【AI変革事例_エネルギー/インフラ業界】AIとドローンで配管点検を高精度化し見落としリスクと危険作業を低減

火力発電所の配管点検にAIとドローンを活用し、見落としリスクの低減と危険作業の削減を実現したAI開発事例です。
実物データが存在しない段階から画像生成AIでデータセットを構築し、AIによる配管腐食の自動検知を実現。設備点検の安全性・精度向上と、経年データを活用した継続的な設備保全の基盤構築を支援しました。
監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CTO 兼 D&Aソリューション事業担当 / データサイエンティスト
広島大学大学院卒業。コンピュータビジョン、機械学習、ディープラーニング領域を専門とするデータサイエンティスト。複数の国際学会へ査読付き論文の採択実績を持つ。2021年、AVILENに参画。AIソリューション事業の最年少マネージャーとしてIPOをはじめとする事業拡大、SaaS事業の立ち上げからグロースを牽引。データ・AI・デジタルを軸としたビジネスモデルの再構築とビジネスプロセスの根本的な変革を、広範な業界の企業に対して支援を行う。
課題
火力発電所の配管の点検は、従来、作業員による目視確認で行われてきました。
ただ、この点検は酸素欠乏危険作業を伴う上、判断が属人的になりやすく、補修候補箇所を見落とすリスクが常に課題となっていました。
発電設備において見落としが発生すれば、将来的な不具合や重大事故につながりかねません。
そこでAVILENは、こうした課題の解決に向けて新たな点検手法を検討していた電力会社とともに、AIとドローンを組み合わせた配管の補修候補箇所検知手法の実証実験に、技術支援というかたちで取り組みました。
ソリューション
実証実験は数ヶ月間にわたって行われ、以下の取り組みを通じて新たな点検手法の確立を目指しました。
- ドローン撮影とAI解析による自動検知
ドローン撮影で取得した映像から、複数の劣化事象を対象に、取得した画像をAIが自動解析し補修候補箇所をリストアップ - 画像生成AIを活用したデータセット構築
ドローン撮影が実施されるまでAIの検知精度を検証するための画像データが存在しないという制約に対し、画像生成AI(テキストなどの指示から画像を作り出す技術)を活用して過去の点検記録や現場担当者へのヒアリングをもとに劣化事象のデータセットを構築し、実物の画像がない環境下でもAI解析モデルの基盤を構築 - 経年データを一元管理するデモアプリケーションの開発
過去の劣化状況・補修履歴をシステム上で記録・可視化し、優先的に点検・補修すべき箇所をデータに基づいて特定できる仕組みを開発
これらの取り組みにより、実物データが乏しい状況でも高精度なAI解析モデルを構築し、実運用を見据えた検証を行いました。
成果
実証実験では、作業員による目視点検でリストアップされた補修候補箇所をAI解析モデルで検知できることが確認できました。
さらに、追加でリストアップすべきと想定される事象を複数検出し、見落としリスクの低減効果を確認できました。
点検にかかる時間は従来と同等の水準で完了できる見込みであり、配管内への入坑をドローン撮影に置き換えることによる安全性の向上も確認されています。
加えて、AI解析にかかるAPIコストも低水準に抑えられることが確認でき、新手法の実運用可能性が示されました。
数値的な成果に加えて、現場確認後に新たな劣化事象が判明した際にも、短時間でAI解析モデルの検知仕様を更新して対応できたことは、生成AIを活用した柔軟な設計の有効性を示す成果といえます。
また、経年データを一元管理するデモアプリケーションの開発により、数年に一度というロングスパンの点検であっても、設備点検結果を引き継げる環境が整いつつあります。
まとめ・考察
この事例の独自性は、実物のドローン撮影映像が存在しない段階から画像生成AIでデータセットを構築し、AI解析モデルの基盤を先行して整えた点にあります。
現場確認後に判明した新たな劣化事象にも短時間で対応できる柔軟性を備えており、限られたデータという制約下でも高精度な検知を実現した技術的な工夫が際立っています。
属人的な目視判断に依存していた点検業務を、AIとドローンによる再現性の高い手法へと置き換えたことは、単なる業務効率化にとどまらず、安全性・精度・データ蓄積のあり方そのものを変える構造的な変化であり、AI変革(AX)と呼ぶにふさわしい取り組みです。経年データを一元管理する仕組みが整ったことで、点検業務の判断がデータに基づいて継続的に高度化していく基盤も整いつつあります。
老朽化が進む社会インフラの点検業務は、電力・ガス・水道をはじめとするエネルギー・インフラ業界全体で、作業員不足・暗黙知の継承・見落としリスクという共通課題を抱えています。
今回得られた知見をもとにAIを活用した設備点検ソリューションを業界全体へ広げていくことは、AIファーストなインフラ運用への転換とAXの加速を後押しする取り組みとなります。
AVILENが考えるAI変革とは
AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスと捉えています。
そのため、AI活用はいきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要だと考えています。
AI導入は「5つのステップ」で進める
AVILENでは、AI変革を以下の5ステップで整理しています。
- リテラシーをつける
データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する - ビジョンを描く
AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする - Quick Winを実現する
短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる - 体制を構築する
人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える - 活用範囲を拡大する
PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく
AI変革を支える3つの考え方
この5ステップを進めるうえで、AVILENが大切にしている考え方は次の3点です。
- コア部分から小さく始め、大きく広げる
- 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
- 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく

本事例の位置づけ
本記事で紹介する取り組みは、こうしたAI変革のプロセスの中で設計された一つの実践例です。
AVILENは、「AIを作る会社」ではなく、AIを使って企業の変革を前に進めるパートナーでありたいと考えています。
記事の筆者

株式会社AVILEN
マーケティングチームリーダー/シニアマーケター / マーケター
立命館大学文学部を卒業後、大手地方新聞社、ビジネス系出版社での編集、広告営業職を経てブレインパッドにマーケターとして参画。2020年にDX、データ活用をテーマにしたオウンドメディア『DOORS -BrainPad DX Media-』を編集長/PMとして立ち上げ、グロース。ブランディングとプロモーションを両立したコンテンツマーケティングで成果を上げ、2022年にグループマネジャーに昇進。2025年7月よりAVILENに参画。





