【AI変革事例_建設業界】画像処理AIと生成AIを活用し、P&ID図の自動読み取りシステムを構築

【AI変革事例_建設業界】画像処理AIと生成AIを活用し、P&ID図の自動読み取りシステムを構築

化学プラント建設におけるP&ID図(配管計装図)の読み取り業務を、画像処理AIと生成AIの組み合わせで自動化したAI開発事例です。
図面に含まれる配管・バルブ・計器など膨大な部材情報をAIが抽出し、資材リスト化までのプロセスを効率化しました。
その結果、作業工数を約25%削減し、誤発注リスクやプロジェクト遅延の軽減に貢献しています。

監修者

監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CTO 兼 D&Aソリューション事業担当 / データサイエンティスト

広島大学大学院卒業。コンピュータビジョン、機械学習、ディープラーニング領域を専門とするデータサイエンティスト。複数の国際学会へ査読付き論文の採択実績を持つ。2021年、AVILENに参画。AIソリューション事業の最年少マネージャーとしてIPOをはじめとする事業拡大、SaaS事業の立ち上げからグロースを牽引。データ・AI・デジタルを軸としたビジネスモデルの再構築とビジネスプロセスの根本的な変革を、広範な業界の企業に対して支援を行う。

課題

化学工場などのプラント建設において、設計の根幹を成す「P&ID図(配管計装図)」には、配管、バルブ、計器といった膨大な部材情報が極めて緻密に書き込まれています。
従来、現場ではこれらの図面をもとに、購入すべき製品を目視で一点ずつ確認し、リスト化・発注を行うという膨大なアナログ作業が発生していました。

この工程には、以下のような深刻な課題が存在していました。

  • 膨大な工数とダブルチェックの負担
    リスト化すべき項目は数万点に及び、人手による確認とミス防止のためのダブルチェックに多大な時間を要していました。

  • 誤発注およびプロジェクト遅延のリスク
    図面上の記号やIDと、実際の商品IDが一致しないケースも多く、複雑な照合作業における誤発注や、それに伴う工期の遅延が大きな懸念となっていました。

これらの「人手に頼り切った運用」からの脱却と、プロジェクト全体の安全な進行が強く求められていたのです。

ソリューション

AVILENは、高度な画像処理AIと生成AIを組み合わせた「P&ID図自動読み取りシステム」を構築し、図面解析からリスト化までのプロセスの自動化を支援しました。

具体的な解決策は以下の通りです。

  • 多様なプロジェクトへの柔軟な対応
    インポートデータに最小限の記載ルールを設けるだけで、プロジェクトごとにフォーマットが異なる多様な図面でもAIが正確に情報を抽出できる仕組みを整えました。

  • IDマッチングアルゴリズムの構築
    図面上のIDと実際の商品情報を高精度に紐付ける独自のロジックを導入。
    複雑な抽出とマッチングの工程をシステム上で一本化しました。

  • 手修正を前提とした実用的なUI
    AIが読み取れなかった箇所については、現場の担当者が最小限の工数で手修正できるよう、直感的な操作が可能なユーザーインターフェースを設計しています。

成果

本プロジェクトの検証対象範囲において、目覚ましい業務効率化の成果が得られました。

最も顕著な成果として、検証範囲における作業工数の約25%削減の見込みが立っています。
これは、具体的なタスク期間の短縮にも現れており、従来4ヶ月を要していたタスク期間を3ヶ月へと短縮できる見通しとなり、プロジェクト全体のリードタイム短縮に大きく寄与しています。
この初期成果を足がかりに、今後PDCAサイクルを継続的に回すことでAIの精度をさらに向上させ、より大きな業務効率化の成果を目指します。

また、単なる時間短縮に留まらず、AIによる自動抽出が定着したことで、人手特有の「見落とし」や「読み間違い」が大幅に減少。
誤発注のリスクやプロジェクト遅延の不安が軽減され、エンジニアがより高度な設計・管理業務に集中できる健全な組織体制の構築に繋がっています。

まとめ・考察

本事例の核心は、人間が数十年かけて培ってきた「複雑な図面を読み解く熟練の目」を、AIが代替可能なレベルまで引き上げた点にあります。
プラント設計図という、極めて密度が高く専門性の強いドキュメントをデータ化した意義は極めて大きいと言えます。

今後は、現在進めているアプリケーション開発をさらに加速させ、読み取り対象の範囲を拡大していく展望です。
蓄積された読み取りデータと実際の発注・施工結果を照合し続けることで、将来的には設計図面から資材調達までをシームレスに繋ぐ、プラント建設DXのスタンダードとなることが期待されます。

AVILENが考えるAI変革とは

AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスと捉えています。
そのため、AI活用はいきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要だと考えています。

AI導入は「5つのステップ」で進める

AVILENでは、AI変革を以下の5ステップで整理しています。

  1. リテラシーをつける
    データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する

  2. ビジョンを描く
    AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする

  3. Quick Winを実現する
    短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる

  4. 体制を構築する
    人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える

  5. 活用範囲を拡大する
    PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく

AI変革を支える3つの考え方

この5ステップを進めるうえで、AVILENが大切にしている考え方は次の3点です。

  • コア部分から小さく始め、大きく広げる
  • 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
  • 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく
AIトランスフォーメーション(AIX)のポイントについて解説しています。

本事例の位置づけ

本記事で紹介する取り組みは、こうしたAI変革のプロセスの中で設計された一つの実践例です。
AVILENは、「AIを作る会社」ではなく、AIを使って企業の変革を前に進めるパートナーでありたいと考えています。

開催予定/配信中のウェビナー

AI変革で成果を出す企業は何を先に決めているのか?AI実装による人材紹介の高度化