Z検定とは?正規分布の母平均の検定手順を解説
ここでは、母分散が既知の正規分布の母平均に関する仮説検定(Z検定)について解説します。
Z検定とは
Z検定とは、母分散が既知の正規分布の場合に実施する仮説検定です。
以降の説明で必要になる前提条件を記載します。
前提条件
標本が互いに独立に正規分布に従うことを仮定する。
この検定では下記を既知な値とします。
・母分散
・帰無仮説による母平均
・標本平均
・標本数
また、両側検定・片側検定について知りたい場合は「片側検定と両側検定の違いをわかりやすく解説」をご確認ください。
両側検定の手順
帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。
帰無仮説:
対立仮説:
次に、正規分布の標準化します。
今回は母平均に関する仮説検定を行うので、検定統計量は標本平均を使います。
帰無仮説の下で~となるので、
有意水準を5%とすると、標準正規分布表より、
P(|z|≧1.96) = 0.05
よって、zの絶対値である|z|が1.96より大きいとき帰無仮説を棄却します。
有意水準を1%とすると、標準正規分布表より、
P(|z|≧2.58) = 0.01
zの絶対値である|z|が2.58より大きいとき帰無仮説を棄却します。
まとめると、標本平均に関して、次の棄却域が得られます。
有意水準5%ならば
有意水準1%ならば
片側検定の手順
帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。
帰無仮説:
対立仮説: または :
対立仮説は2通りありますが、どちらも手順は同じなので、ここでは の場合について解説します。
標準化を行うと帰無仮説の下で
となります。
もし、対立仮説のが正しければ、は帰無仮説の場合よりも大きな値を取る確率が高くなります。
棄却域は、帰無仮説の下でが大きな値を取る確率が有意水準αとなるように定めます。
有意水準を5%とすると、標準正規分布表より、
P(z≧1.645) = 0.05
有意水準を1%とすると、標準正規分布表より、
P(z≧2.33) = 0.01
まとめると、標本平均に関して、次の棄却域が得られます。
有意水準5%ならば
有意水準1%ならば
Z検定の例題
例題を通してZ検定の手順を考えましょう。
A高校の入学試験は毎年6000人の人が受験する。過去の入試の結果は平均400点、標準偏差120の正規分布に従う。
今年の入学試験も例年同様6000人の人が受験し、採点官の田中さんが採点した45人の平均点は=440点、標準偏差は = 90であった。
この結果から志願者の学力は向上していると言えるだろうか。有意水準5%、1%それぞれで検定した結果を考えましょう。
解答例
前提として、例題の中で過去の入試結果の標準偏差(母標準偏差)が与えられており、母分散が既知のためZ検定を適用できることを確認します。
今回検証したいのは、「志願者の学力が向上しているか」なので、片側対立仮説を採用して帰無仮説と対立仮説を設定します。
今回の入試結果の母平均について、
帰無仮説: (母平均は過去の入試と変わらず400点)
対立仮説: (母平均は過去の入試の400点より高い)
次に標準化を行います。の下で、
標準正規分布表より、棄却域は以下となります。
有意水準5%のとき
有意水準1%のとき
つまり、
有意水準5%で仮説検定したとき、志願者の学力レベルは向上したと言える。
有意水準1%で仮説検定したとき、志願者の学力レベルは向上したと言えない。
となります。
母分散が未知の場合はどうするのか
Z検定は母分散が既知の正規分布の場合に実施しますが、母分散が未知の場合はt検定を使います。
t検定では、母分散が未知なので標準化の計算過程に標本不偏分散を使います。
詳しくは「t検定とは?種類と手順を解説」をご確認ください。
カテゴリ: 仮説検定
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記事の筆者
AVILEN編集部
株式会社AVILEN