Z検定とは?正規分布の母平均の検定手順を解説

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ここでは、母分散が既知の正規分布の母平均に関する仮説検定(Z検定)について解説します。

Z検定とは

Z検定とは、母分散が既知の正規分布の場合に実施する仮説検定です。

以降の説明で必要になる前提条件を記載します。

前提条件

標本x1,x2,...xnx_1,x_2,...x_nが互いに独立に正規分布N(μ,σ2)N(μ,σ^2)に従うことを仮定する。

この検定では下記を既知な値とします。

・母分散 σ2σ^2
・帰無仮説による母平均 μ0μ_0
・標本平均 xˉ\bar{x}
・標本数 nn

また、両側検定・片側検定について知りたい場合は「片側検定と両側検定の違いをわかりやすく解説」をご確認ください。

両側検定の手順

帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。

帰無仮説H0H_0μ=μ0μ = μ_0
対立仮説H1H_1μμ0μ ≠ μ_0

次に、正規分布の標準化します。

今回は母平均に関する仮説検定を行うので、検定統計量は標本平均xˉ\bar{x}を使います。

帰無仮説H0H_0の下でxˉ\bar{x}~N(μ0,σ2n)N(μ_0,\frac{σ^2}{n})となるので、

z= xˉμ0σnN(0,1)z =  \frac{\bar{x}-μ_0}{\frac{σ}{\sqrt{n}}} ~N(0,1)

有意水準を5%とすると、標準正規分布表より、

P(|z|≧1.96) = 0.05

よって、zの絶対値である|z|が1.96より大きいとき帰無仮説H0H_0を棄却します。

有意水準を1%とすると、標準正規分布表より、

P(|z|≧2.58) = 0.01

zの絶対値である|z|が2.58より大きいとき帰無仮説H0H_0を棄却します。

まとめると、標本平均xˉ\bar{x}に関して、次の棄却域が得られます。

有意水準5%ならば   xˉμ01.96σn|\bar{x}-μ_0|≧1.96\frac{σ}{\sqrt{n}}

有意水準1%ならば   xˉμ02.58σn|\bar{x}-μ_0|≧2.58\frac{σ}{\sqrt{n}}

片側検定の手順

帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。

帰無仮説H0H_0μ=μ0μ = μ_0
対立仮説H1H_1μ>μ0μ \gt μ_0 または H1H_1μ<μ0μ \lt μ_0

対立仮説は2通りありますが、どちらも手順は同じなので、ここでは μ>μ0μ \gt μ_0の場合について解説します。

標準化を行うと帰無仮説H0H_0の下で

z= xˉμ0σnN(0,1)z =  \frac{\bar{x}-μ_0}{\frac{σ}{\sqrt{n}}} ~N(0,1)

となります。

もし、対立仮説のが正しければ、xˉ\bar{x}は帰無仮説の場合よりも大きな値を取る確率が高くなります。

棄却域は、帰無仮説の下でxˉ\bar{x}が大きな値を取る確率が有意水準αとなるように定めます。

有意水準を5%とすると、標準正規分布表より、

P(z≧1.645) = 0.05

有意水準を1%とすると、標準正規分布表より、

P(z≧2.33) = 0.01

まとめると、標本平均xˉ\bar{x}に関して、次の棄却域が得られます。

有意水準5%ならば   xˉμ01.645σn\bar{x}-μ_0≧1.645\frac{σ}{\sqrt{n}}

有意水準1%ならば   xˉμ02.33σn\bar{x}-μ_0≧2.33\frac{σ}{\sqrt{n}}

Z検定の例題

例題を通してZ検定の手順を考えましょう。

A高校の入学試験は毎年6000人の人が受験する。過去の入試の結果は平均400点、標準偏差120の正規分布に従う。

今年の入学試験も例年同様6000人の人が受験し、採点官の田中さんが採点した45人の平均点はxˉ\bar{x}=440点、標準偏差はσ^\hat{σ} = 90であった。

この結果から志願者の学力は向上していると言えるだろうか。有意水準5%、1%それぞれで検定した結果を考えましょう。

解答例

前提として、例題の中で過去の入試結果の標準偏差(母標準偏差)が与えられており、母分散が既知のためZ検定を適用できることを確認します。

今回検証したいのは、「志願者の学力が向上しているか」なので、片側対立仮説を採用して帰無仮説と対立仮説を設定します。

今回の入試結果の母平均μμについて、

帰無仮説H0H_0μ=400μ = 400(母平均は過去の入試と変わらず400点)
対立仮説H1H_1μ>400μ \gt 400(母平均は過去の入試の400点より高い)

次に標準化を行います。H0H_0の下で、

z=xˉμ0σnN(0,1)=44040012045N(0,1)2.236z = \frac{\bar{x}-μ_0}{\frac{σ}{\sqrt{n}}} ~N(0,1) = \frac{440-400}{\frac{120}{\sqrt{45}}} ~N(0,1) \approx 2.236

標準正規分布表より、棄却域は以下となります。

有意水準5%のとき   xˉμ01.645σn\bar{x}-μ_0≧1.645\frac{σ}{\sqrt{n}}

有意水準1%のとき   xˉμ02.33σn\bar{x}-μ_0≧2.33\frac{σ}{\sqrt{n}}

つまり、

有意水準5%で仮説検定したとき、志願者の学力レベルは向上したと言える。
有意水準1%で仮説検定したとき、志願者の学力レベルは向上したと言えない。

となります。

母分散が未知の場合はどうするのか

Z検定は母分散が既知の正規分布の場合に実施しますが、母分散が未知の場合はt検定を使います。

t検定では、母分散が未知なので標準化の計算過程に標本不偏分散を使います。

詳しくは「t検定とは?種類と手順を解説」をご確認ください。

カテゴリ: 仮説検定

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