生成AI活用を成果につなげる、「プロンプトエンジニアリング」4つの実践ステップ

本記事では、株式会社 AVILEN が提供する「実践プロンプトエンジニアリング研修」の設計思想をもとに、業務で本当に使えるプロンプトエンジニアリングとは何か、そしてそれを組織に定着させるための4つのステップを解説します。
目次
生成AI活用が成果に結びつかない理由

PwCが2024年と2025年に実施した調査では、生成AIを「既に活用している」「具体的な案件を推進中」と答えた企業の中で、「まだ効果を評価できていない」層が 25%から 14%へと減少しました。つまり、評価ができるようになった企業は増えたのです。
しかし同時に、「やや期待を下回る」「期待とはかけ離れた結果になった」と答えた企業も 18% から25% へと増加しています。これは何を意味するのでしょうか。
活用自体は進んでいるにもかかわらず、期待通りの成果を出せずに伸び悩んでいる企業が増えている、という実態が浮かび上がってきます。なぜ、このような“期待外れ”が起きてしまうのでしょうか。
PwCの調査では、成果を出した企業とそうでない企業とで、成功・失敗の要因に対する認識が異なることも示されています。

ここで注目すべきは、成果を出した企業は「経営層ビジョンとの一致」を重視しており、期待未満だった企業は「社員の AI リテラシー」を失敗要因と考えている点です。
成果を出している企業は、社員の AI リテラシーを失敗要因として挙げていません。なぜなら、すでに社員が AI を使える状態になっているからです。つまり、経営層のビジョンも一致していて、社員も活用レディーな状態になっている。そこまで整えた上で、適切なユースケースを設定しているのです。
逆に、期待未満だった企業は、ユースケース設定がうまくいかず、社員の育成も中途半端なまま、現場に過度な期待をかけてしまっていると言えます。
この課題は、組織の階層ごとに異なる形で現れます。
- 経営層: 「競争力強化のために生成AIを活用したいが、効果が見えにくく投資対効果を測れない。ガバナンスやリスクの問題もあり、全社推進に踏み切れない」など
- 研修担当者: 「基礎的な使い方は教えたが、実務での活用が進まない。社員のスキル格差も大きく、成功事例が生まれず横展開もできない」など
- 現場社員: 「便利そうだが、自分の業務にどう使えるかわからない。セキュリティも不安で、効果的に使えている実感がない」など
このように、それぞれの立場で課題を抱えているため、生成AIの業務活用がなかなか前に進まないのです。

成果を出す組織に欠かせない3つの焦点と2つのアプローチ
では、これらの課題を乗り越え、生成AI活用を軌道に乗せるにはどうすればよいのでしょうか。私は、解決すべき焦点を大きく3つに整理しています。
- 人材の育成: 社員が業務で生成AIを活用できる基礎力と応用力を身につけること。
- 文化の普及: 全社的に生成AIを安全かつ効果的に使える文化を根付かせること。
- 事例の創出: 社内で成功事例を積み上げ、横展開して活用を広げること。
そして、これらの焦点に取り組む方向性として、「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つのアプローチが存在します。
トップダウン型は、経営層が主導し、全社必須研修の実施やルール整備、予算を確保したうえでのPoC(概念実証)企画など、一定の強制力を持って施策を実行できる強みがあります。
一方、ボトムアップ型は、現場の社員が自発的に活用し、小さな成功事例を積み上げていく手法です。
理想は両方のアプローチを同時に進めることですが、多くの企業ではリソースの制約などから、現場からの自発的な活用に期待をかける、いわば“ボトムアップ頼み”の状態に陥りがちです。現場は有効な施策が提供されないまま「成果を出せ」と求められ、過度な期待がかかってしまっているのです。
だからこそ、現場が自走するための、ボトムアップに適した施策、特に「研修」の設計が極めて重要になると私は考えています。
“業務で使える”プロンプトエンジニアリングとは? 4つの実践ステップ
「生成AIで何ができるか」という知識の習得は、あくまでスタート地点に過ぎません。真に業務を変革し、生産性を向上させるためには、その知識を「業務の中でどのように活用するか」という具体的な行動と実践が不可欠です。インプットとアウトプットの間に横たわる、この大きなギャップを埋めることこそが、現在のビジネスパーソンに求められています。
AVILENが提供する『実践プロンプトエンジニアリング研修』は、まさにこの点を重視して設計されています。研修の目的は、受講者が単なるAIの操作方法を学ぶのではなく、プロンプトを業務の文脈に合わせて戦略的に設計・実行するスキル、すなわち「プロンプトエンジニアリング」の本質を習得することにあります。
研修は、単なる知識のインプットで終わらない、知る → 試す → 振り返る → 共有するという4つの実践的なステップで構成されています。

STEP 1:知る──ビジネス視点でのインプット
最初のステップは、生成AIの基礎知識とプロンプトエンジニアリングの手法を学ぶことです。ただし、ここで重要なのは、技術だけでなく、ビジネス適用の視点も教えることです。

課題設定編では、以下のような内容を扱います。
- 生成AIが向いている業務と向いていない業務の見極め方
- インパクトが大きい業務の特定方法
- 業務プロセスへの適用フロー
たとえば、「生成AIが向いている業務」には、以下のような領域があります。
- 生成AIのみが向いている領域:生成AIならではの強みが活かせる業務
- 従来のAIと生成AIの両方が向いている領域:生成AIの登場で簡単に対応できるようになった業務
- 生成AIが向いていない領域:特定タスクに特化したAIが必要、またはそもそもAIが向いていない業務
また、インパクトが大きい業務の例として、以下が挙げられます。
- 大量のリソース(人・モノ・金・時間)が必要な業務(例:カスタマーサポート、新卒採用選考)
- 収益増加の影響度が大きい業務(例:マーケティング活動、顧客管理)
- 属人化が進んでいる業務(例:特定社員のノウハウに依存している業務)
- 個人や一部のプロジェクトを越えて波及効果のある業務(例:人事評価、組織全体の戦略会議)
さらに、段階的な適用範囲の拡大という考え方も重要です。いきなり業務フロー全体に生成 AI を適用するのではなく、まずは小さな業務プロセスから始め、ノウハウを蓄積しながら範囲を広げていく。たとえば、採用業務なら、最初は書類判定に限定して生成AIを使い、そこで得た知見をもとに、面接日程調整や候補者フォローへと広げていく。この段階的アプローチが、成功事例を積み上げる上で非常に重要です。
プロンプトエンジニアリング編では、基礎的な手法から応用的なテクニックまで、欲しいアウトプットを引き出すスキルを習得します。ただし、ここでも単なる技術解説に留まらず、実際のビジネスシーンを想定したワークを通じて、実践力を鍛えます。
STEP 2:試す──自身の業務で実際に活用する
知識をインプットしただけでは意味がありません。重要なのは、研修中に自分の業務で実際に使ってみることです。
AVILENの研修では、「業務活用ワークシート」を使って、受講者に以下の作業を行わせます。
- 現状の業務を整理する:どんな業務を、どんなプロセスで行っているかを可視化
- インプット・処理・アウトプットを定義する:生成AI に何を入力し、何を出力させるかを明確化
- 人間のチェック項目を設定する:生成AIの出力のどこを人間が確認・修正するかを決める
- 実際に業務で使ってみる:1週間〜1ヶ月間、実務で試行する
たとえば、「新卒採用時の書類判定」という業務であれば、以下のように設計します。
- インプット:応募書類、選考基準
- 処理:選考基準リストに基づいて○×△を付ける
- アウトプット:判定結果を表形式で出力
- 人間のチェック:妥当性の確認・修正、△の項目の最終判定
このプロセスを通じて、受講者は「自分の業務に生成 AI をどう組み込むか」を具体的に設計できるようになります。

STEP 3:振り返る──効果を測定し、評価する
試した後は、結果を振り返り、効果を測定します。AVILEN の研修では、「振り返りワークシート」を使って、以下の6項目で評価します。
- 業務効率:削減された業務時間(定量)
- 求めるアウトプットへの一致度:求めるアウトプットにどれだけ一致しているか(定性・3 段階)
- 業務成果:人間が行った場合と比較して成果は向上したか(定性・3 段階)
- 新規性:今までにない新しいアイディアやアプローチを生み出したか(定性・3 段階)
- 拡張性:他のチームや業務でも利用可能か(定性・3 段階)
- セキュリティ:セキュリティや倫理に関するリスクを考慮できているか(チェックボックス)
この評価によって、どの活用案が効果的だったのか、どこに課題があるのかが明確になります。
STEP 4:共有する──学びを組織の知見にする
最後に、受講者同士で集まり、それぞれの実践結果や学びを共有するワークショップを実施します。
ワークショップでは、以下のような流れで進めます。
- 生成 AI 適用成果の発表:他者の事例を客観的に評価
- 自己振り返り:自身の成功要因・改善要因を整理
- チーム内振り返り:グループで議論し、学びを深める
- クロージング:研修後の行動指針を理解
このように、個々の学びを組織の知見にすることで、組織全体の生成AI活用能力を大きく向上させることができます。たとえば、『この業務プロセスには生成 AI がうまく適合した』『このプロンプトは有効だった』という"上手くいった"知見を共有すれば、他の部署にも横展開できます。逆に、『このケースでは回答精度が低かった』という"上手くいかなかった"知見を共有すれば、生成 AI の苦手領域を組織全体で理解でき、出力精度の改善に向けた議論も生まれます。

「組織の資産」へと昇華させた成功事例
この研修の特長は、個人のスキルアップに留まらない点にもあります。受講者が作成したワークシートは、企業にとって貴重なデータとなります。
受講者が作成した「業務活用ワークシート」と「振り返りワークシート」は、単なる演習の記録ではありません。それらを集約・分析することで、以下のような価値が生まれます。
- 成功パターンの傾向把握:どんな業務に生成 AI が適合しやすいか、どんなプロンプトが有効かを分析
- 活用の実態や課題の把握:現場でどんな困りごとがあるのか、何が障壁になっているのかを可視化
- 活用結果の自動測定:各活用案の効果を定量的に評価し、投資対効果を算出
実際に、本研修を導入されたキリンホールディングス様では、約600名の社員が受講した結果、月あたり約2,200時間もの労働時間削減に成功しました。さらに、研修を通じて450件以上の具体的な活用事例が社内に蓄積されたのです。これは、研修が単なるコストではなく、企業の成長に繋がる「資産」となった好例と言えるでしょう。
【プレスリリース】AVILEN、キリンホールディングスに生成AI研修を提供 〜社員の生成AI活用スキルを向上し月2,200時間の労働時間削減に成功〜

よくある研修は、知識をインプットして終わりです。しかし、この研修では、受講者が実際に業務で使い、その結果を測定し、それが企業全体のアセットになる。つまり、研修そのものが投資対効果を生み出すのです。
実践なきプロンプトエンジニアリングは意味がない
生成AI活用の推進担当者にとって、最大の課題は「研修をやったのに、現場が変わらない」ことです。その原因は、技術を教えるだけで、業務への適用プロセスを設計していないことにあります。
業務で本当に使えるプロンプトエンジニアリングとは、以下の要素を満たすものです。
- ビジネス視点での知識:どの業務に、どう適用すべきかを理解している
- 実践の経験:自分の業務で実際に使ってみた経験がある
- 効果測定の習慣:使った結果を振り返り、改善できる
- 共有の文化:組織全体で学びを共有し、横展開できる
AVILEN の「実践プロンプトエンジニアリング研修」は、この 4つを一貫して実現する設計になっています。そして、その結果として、研修のアウトプットが企業の資産になり、投資対効果も明確になるのです。
あなたの組織で、プロンプト研修は"実践"に結びついていますか? もし答えが「No」なら、今こそ設計を見直すタイミングかもしれません。AVILENでは、今回ご紹介した研修以外にも、リテラシーレベルの向上から、より専門的な開発・実装スキルを習得する講座まで、企業のフェーズや課題に合わせた多様なプログラムをご用意しています。

「何から手をつければいいかわからない」「今の取り組みが正しいのか不安だ」と感じている方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。皆様の組織が生成AIを真に活用し、大きな成果を生み出すためのお手伝いができれば幸いです。
また、「実践プロンプトエンジニアリング研修」について詳しく解説しているウェビナーもご用意しておりますので、ご興味があればあわせてご確認ください。
https://avilen.co.jp/archived-webinars/form/apply/practical-prompt-engineering/
記事の筆者

株式会社AVILEN データサイエンティスト
東京理科大学大学院にて数理統計学の修士(理学)を取得。ソフトバンク株式会社を経てAVILENへ。金融系クライアント先にてAI案件の企画・推進を担い、予測・分類・時系列解析など数多くのモデル開発を経験。その知見を活かし、現在は企業向けeラーニング講座の企画・設計・運営を担当し、「ビジネス現場でAIを使える」人材の育成を支援している。2020年 E資格 #1取得者。


