MAモデルとは
MAモデル(Moving Average model)は移動平均モデルとも呼ばれています。
MAモデルが実際に用いられることは少ないですが、MAモデルとARモデルを組み合わせたARIMAモデル、SARIMAモデルはビジネス分析などに用いられます。
1次MAモデル
1次MAモデルは以下の式で表されます。
yt=θ0+εt+θ1εt−1
ただし、ホワイトノイズεt の分散はσ2とする。
上記の式を見てみると1次MAモデルが定数項θ0と2つのホワイトノイズεt,εt−1によって構成されていることが分かります。
このホワイトノイズは時間によって発生するランダムな数と考えましょう。
1次MAモデルでは1時点前までのホワイトノイズを用います。n次MAモデルであればn時点前までのホワイトノイズを用います。
MAモデルは定数とホワイトノイズの加重和によって表されるモデルと言えます。
1次MAモデルの統計量
期待値
期待値を扱うにあたり、ARモデルでは定常性に注意する必要がありましたが、MAモデルでは定常性について考える必要はありません。
1次MAモデルのytの期待値を計算するにあたり、以下の1次MAモデル式について考えます。
yt=θ0+εt+θ1εt−1
上記の式の両辺の期待値をとります。
E[yt]=E[θ0]+E[εt]+θ1E[εt−1]
ホワイトノイズの期待値はどんなtに対してもE[εt]=0であるから、以下のように求めることができます。
E[yt]=θ0
この結果からytの期待値は定数項θ0であるということが分かります。
これを踏まえ、1次MAモデル式の定数項θ0を期待値μと置き換えると以下のように表せます。
yt=μ+εt+θ1εt−1
自己共分散
1次MAモデルの自己共分散 γtについて考えます。
まずはytの分散がどのような値を取るかについて計算し、そのあとに自己共分散 γtについて計算します。
では、以下の1次MAモデルについて分散V[yt] を考えます。
yt=θ0+εt+θ1εt−1
上記の式の両辺の分散をとります。
V[yt] =V[θ0]+V[εt]+V[θ1εt−1]= V[εt]+ θ12V[εt−1]
ホワイトノイズの分散はどんなtに対してもV[εt]=σ2であるから、以下のように求めることができます。
V[yt]=(1+θ12)σ2
次にj次自己共分散 γtについて考えます。
以下のように γtを表すことができます。
γt=Cov[yt,yt−j]=Cov[θ0+εt+θ1εt−1, θ0+εt−j+θ1εt−j−1] …(1)
では、1次自己共分散 γ1を求めてみます。(1)の式を用いて考えます。
γ1 =Cov[yt, yt−1]=Cov[θ0+εt+θ1εt−1, θ0+εt−1+θ1εt−2]=Cov[εt−1, θ1εt−1]= θ1V[εt−1]= θ1σ2
ホワイトノイズの自己共分散Cov[εt,εt−j] =0であることを用いた。
実は1次MAモデルには2次以上の自己共分散は存在しません。
γj =Cov[yt,yt−j]=Cov[θ0+εt+θ1εt−1,θ0+εt−j+θ1εt−j−1]= Cov[εt, εt−j+θ1εt−j−1]+Cov[θ1εt−1, εt−j+θ1εt−j−1]=0
ホワイトノイズの自己共分散Cov[εt,εt−j] =0であることを用いた。
2次以上の自己共分散は γt=0と計算できました。このことから1次MAモデルに2次以上の自己共分散が存在しないことが分かります。
自己相関
1次MAモデルの自己相関ptについても考えてみましょう。
1次MAモデルに2次以上の自己共分散が存在しないことを考えると、1次の自己相関p1のみ存在します。
p1= γ0 γ1= 1+θ12 θ1
γ0は分散V[yt] であることを用いました。
この計算結果からθ1の値によって自己相関p1の強さが決まると解釈できます。
また1次MAモデルは1次までの自己相関を持つデータを表現できると分かります。
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