逆行列とは
行列の計算において、足し算、引き算、掛け算の操作はできますが、割り算はできません。
行列の計算において、割り算と同じ働きをするものを「逆行列」といいます。
例えば、「2で割る」ことを「1/2を掛ける」と考えるようなイメージです。
行列Aの逆行列はA−1と表します。
2×2行列の逆数
A=(acbd)とするとA−1は以下のようになります。
A−1=ad−bc 1(d−c−ba)
ただし ad−bc=0とする。もし ad−bc=0のとき、逆行列は存在しない。
例題を考えてみましょう。
例題
行列A=(3724)のとき、逆行列A−1を求めよ。
解答は以下の通りです。
A−1=3×4−2×71(2−7−43)
=−21(2−7−43)
3次以上の正方行列に対する逆行列と掃き出し法
3次以上の正方行列の逆行列を求めるときは次に紹介する掃き出し法がおすすめです。
公式
行列Aの右隣にIをつけ、[A I]にする。そして行基本変形を行い、[I B]に変形する。
行列Bが行列Aの逆行列である。
例題を考えてみましょう。
例題
行列A=102211221のとき、逆行列A−1を求めよ。
解答は以下の通りです。
行列Aの右隣に単位行列Iをつけ、10221122 1 1000100 0 1とし、この行列を行基本変形し、[I B]に変形する。
まず、この行列の1行目を-2倍し3行目に加えると次のようになる。
10021−322 −3 10−20100 0 1
次に2行目の行列の-2倍を1行目に加え、3行目の行列に−31をかけると次のようになる。
100011−22 1 1032−2100 0 −31
同様に2行目の行列の-1倍を3行目に加えると次のようになる。
100010−22 −1 10 32−21−10 0 −31
同様に3行目の行列の-2倍を1行目に加え、3行目の行列の2倍を2行目に加えると次のようになる。
10001000 −1 −3134 320−1−131 −32 −31
最後に3行目を-1倍かける。
10001000 1 −31 34 −320−11 31 −32 31
以上より、[I B]の形に式変形することができた。よって
A−1=−31 34 −320−11 31 −32 31
となる。