【AI人材育成事例_三菱UFJフィナンシャルグループ×AVILEN】グループ 14社・267名が参加したデータサイエンスコンペ

国内のIT人材は不足の一方などと言われ、特にDXに必要な高度スキルセットを兼ね備えたAI・データサイエンティストなどの人材は、需要と供給のバランスが全く取れていません。
そんな中で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がデジタル人材・データサイエンティスト候補者の発掘・育成を目的に、グループ内企業14社から267名が参加するデータサイエンスコンペを開催しました。
かねてよりMUFGでは「デジタル人材の育成」に注力しており、様々な取り組みを実施していますが、今回のような取り組みは初めてとなります。
同じような形式でPython(プログラミング言語)を用いてデータ分析でスコアを競い合うこと自体は世界的に有名なプラットフォーム:Kaggle(カグル)などもあり、AI・データサイエンスに精通している人々からすると珍しいことではなく、Kaggler(カグラー)と呼ばれる人々までいるくらい広く認知されています。
しかし、これを個人的な取り組みではなく、企業が人材育成の企画として社内で開催することは珍しく、単純な研修とは異なり実践的なイベント形式で実施された本取り組みは、新たな人材育成のスタイルとして注目すべき事例です。
今回は、本取り組みの主担当者である三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行 システム企画部・中野 花奈子様とデジタルサービス企画部・川尻 名緒様、三菱UFJ信託銀行デジタル企画部・一之瀬 拓様、海老名 喜直様に開催の背景や、実施内容、今後の展望などを詳細に語ってもらいました。

データサイエンスコンペ開催の背景
– まずは、グループ内でのデジタル人材育成への課題感などを教えてください。
三菱UFJ信託銀行・一ノ瀬氏:
AI・データ分析の活用をはじめDX推進のニーズは高く、スキルを習得したいというモチベーションの高い社員もいるものの、ゼロから独学で実践的なスキルを習得できる人は多くないと考えています。
また、デジタル人材・データサイエンティストの育成に向け、人材確保したい業態・部署は多い一方で、どこにその人材がいるのか把握しきれていないと言う課題もありました。
– その中で、なぜデータサイエンスコンペを社内で実施することに至ったのでしょうか?
三菱UFJ信託銀行・海老名氏:
前述の課題解決のために何かできないかと考えた際に、データサイエンスコンペは、ゲーム感覚で楽しみながらデータ分析スキルを身につけられる点、モデルの精度として定量的に参加者の評価が可能な点で、人財の育成・把握に適した施策であると考え、コンペの開催を提案いたしました。
当初は三菱UFJ信託銀行(以下、信託)のみでの開催も想定しておりましたが、MUFG全体で開催したほうが盛り上がるのではないかと考え、MUFGのAIラボ(MUFGのAI技術活用を統括・推進するMUFGデジタルサービス企画部とシステム企画部の協働プロジェクトチーム)へ協力を依頼しました。
三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行・中野氏:
私は三菱UFJ銀行(以下、銀行)・三菱UFJインフォメーションテクノロジー(以下、MUIT)のデータサイエンティスト育成を担当していますが、以前チーム内で小規模なコンペを開催したことがあり、効果・意義は実感していたため、ぜひ一緒に開催したいと思い社内調整を開始しました。
一方で、9月に頭出しされ12月には開始と言うスピード感だったので、正直なところ予算や運営体制等の準備が間に合うか、参加者が集まるのかの不安はありましたね。
実施に向けての準備
– 初めての取り組みだと思いますが、どのように企画を進めたのでしょうか?
三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行・中野氏:
まずMUITの教育担当に相談したところ、面白そうだと快諾してくれました。
次に銀行のデジタル人材育成担当の協力も得られたため、エンジニアに限らず広く開催することになり、そこからは急ピッチで準備を進めました。
MUFGの各社とは定期的にAI・データ分析の担当者と情報交換を実施しているのですが、その中でMUFGベースでの開催を呼び掛けたところ、開催が迫る中ではありましたが、17社中14社は参加を決めてくれて、グループベースの開催が実現しました。
三菱UFJ信託銀行・海老名氏:
MUFG内の関係者調整と並行して、コンペやeラーニング等の企画を進めました。
AVILEN様と相談のうえ、初学者でも参加できるよう事前学習用のeラーニングをセットで提供すること、質疑・交流ができる場所を用意することを決めました。
また、テーマも金融の社員に分かりやすいものとすることで、参加のハードルをなるべくさげるように検討を進めましたね。
– 社内調整など大変だったと思いますが、お話いただける範囲でのご苦労談などあれば教えてください。
三菱UFJ信託銀行・海老名氏:
AI・データ分析の担当部署以外にとっては、コンペの形態に馴染みがなく、「Pythonでプログラミングする専門外の人にとって難易度の高いイベントに人が集まるのか?」「本当にスキル人材の育成や把握ができるのか?」と言う疑問の声もあがったため、Kaggle等の業界動向、他業界での実績等を示し実施に漕ぎ着けました。
募集を開始したところ、想定を超える応募があり、DXやAIへの関心の高さ、成長と挑戦への高いモチベーションが窺えました。
また、システム関連の部署以外、特に営業店からの応募が多く、年齢層も若手からシニアまでと幅広かったことも嬉しい誤算でした。
– 参加者のレベルもまちまちかと思いますが、どのように参加者を募ったのでしょうか?
三菱UFJ信託銀行・一ノ瀬氏:
業態により範囲は異なりますが、信託では全社に、銀行では一定の資格を保有するデジタルの基礎知識のある社員に募集をかけました。
他の業態には、MUFGから声かけし、AI・データ分析に携わっている方を中心に参加者を募りました。
具体的な開催期間や運営
– 実際の開催期間や時期などを教えてください。
三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行・川尻氏:
2021年9月から検討を開始し、10月には参加業態を決定、11月に参加者を募り12月に開始という、グループ横断開催にしてはかなり早いスピードで準備を進めました。
12月より事前学習のeラーニングを開始し、翌1月から3月18日までコンペを開催。3月22日には表彰式を開催したので表彰式前の運営はバタバタでした。
– 実際に開催してみて、トラブルや見えていなかった課題などはなかったですか?
三菱UFJ信託銀行・海老名氏:
実務経験者はコンペが開始された瞬間にハイスコアを叩き出した一方で、初学者はなかなか提出まで辿り着けずに苦戦しており、モチベーション維持・キャッチアップの必要性を感じました。
中間で、初学者・中上級者の参加者レベルに分けてフォローアップセミナーを開催したり、情報交換の場で参加者同士交流頂いたりと工夫を図ったことで、離脱者は減ったのではないかと思います。
また、各種イベントがコロナの影響でオンラインとなってしまいましたが、表彰式では会場から中継でAVILENの高橋社長に登壇至りいただいたり、MUFGの大澤執行役常務、木村常務執行役員に表彰いただいたりと、盛り上げていただきました。

データサイエンスコンペを終えて社内の声
– コンぺを終えた後の参加者の声はいかがでしょうか?
三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行・中野氏:
いくつかご紹介します。
- 初のグループでのコンペということもあり、非常に盛り上がりが楽しく参加できた。これを機に他のプログラミング言語への学習意欲も高まり、参加してよかったと感じている。
- 興味はあったものの、なかなか自分だけでは学習を始められなかったが、これを機に思い切って始めることができた。
- データ分析について、表面的ではなく自分の手で行うことで、今までよりさらに深く理解できた。
- データ分析手法について、もっと勉強した上で次回も参加したい。
など、スキルアップ・モチベーションアップに繋がったと嬉しい声を多くいただきました。
難易度や、期間については改善を望む声もあったため、次回開催時は更に良い内容になるよう、参加者の声を反映していきます。
– マネージャーや経営層の方などからはどのようなお声が出ていますか?
三菱UFJフィナンシャル・グループ兼三菱UFJ銀行・川尻氏:
参加者からの高評価や、未経験者も奮闘した結果を受け、社内の反響はとても大きく、規模を拡大して継続していくべきだとの声があがっています。
また参加者の活躍の場、交流の場を広げて行きたいとの声もあり、検討しています。
今後の展望や取り組み
– 人材育成に終わりは無いように思えますが、今後の展望などがあれば教えてください。
三菱UFJ信託銀行・一ノ瀬氏:
データサイエンスコンペは、人材の育成と把握に非常に意義のあるものだと実感し、また、グループ横断で開催することで、モチベーションアップやネットワーキングにも繋がり、MUFGとしてのDX加速にも意義があるものだと改めて感じました。
まずは第2回目のコンペを、規模を拡大して更に盛り上げていきたいと正に関係者で相談を進めています。
– そのうえでビジネスモデルの変革をどんどん加速していこうということですか?
三菱UFJ信託銀行・海老名氏:
はい、グループ一丸となって、変革を加速していきたいと考えています。
まとめ
はじめての取り組みということもあり、企画・運営面での苦労もあったようだが、確実に言えることは多くの企業が危機感をもってDXを推進しようとしているのと同様に、多くの人がデジタル・AIの活用に関心を示しており、学ぶ機会があれば手が挙がるということがわかりました。
これは金融業界に限ったことではなく、国内全ての事業会社に言えることで、チャレンジングな取り組みこそがDXを加速させるきっかけになることは間違いありません。
記事の筆者

AVILEN編集部
株式会社AVILEN



