【AI変革事例_小売・流通業界】生成AIでIR資料の翻訳業務を劇的に効率化

【AI変革事例_小売・流通業界】生成AIでIR資料の翻訳業務を劇的に効率化

海外投資家向けIR資料の翻訳業務を、生成AIで効率化したAI開発事例です。
過去のIR資料を学習させた企業専用の翻訳AIを構築し、企業固有の表現や専門用語を維持した高品質な翻訳を自動生成できる仕組みを整えました。
その結果、1次翻訳にかかる工数を従来の3〜5日から1日へ短縮し、翻訳コスト削減と属人化解消を実現しています。

監修者

監修者

株式会社AVILEN
執行役員 CTO 兼 D&Aソリューション事業担当 / データサイエンティスト

広島大学大学院卒業。コンピュータビジョン、機械学習、ディープラーニング領域を専門とするデータサイエンティスト。複数の国際学会へ査読付き論文の採択実績を持つ。2021年、AVILENに参画。AIソリューション事業の最年少マネージャーとしてIPOをはじめとする事業拡大、SaaS事業の立ち上げからグロースを牽引。データ・AI・デジタルを軸としたビジネスモデルの再構築とビジネスプロセスの根本的な変革を、広範な業界の企業に対して支援を行う。

課題

グローバルな事業展開を行う大手企業にとって、海外投資家向けIR資料の多言語展開は不可欠です。
しかし、本事例のクライアントでは、日本語資料の翻訳業務において深刻な課題を抱えていました。

  • 業務の属人化と継続性の懸念
    社内の熟練翻訳者に依存していましたが、翻訳者の高齢化により、将来的な業務継続に不安が生じていました。

  • 高額な外部委託コスト
    専門性の高いIR資料は翻訳難易度が高く、外部委託にかかるコストの削減が急務となっていました。

  • 専門性の高い表現への要求
    企業固有の言い回しや「この日本語にはこの英語を充てる」といった独自のニュアンスが強く、一般的な自動翻訳では対応できない精緻さが求められていました。

ソリューション

AVILENは、過去の膨大なIR資産を有効活用し、クライアント企業専用の「生成AI翻訳システム」を構築しました。

  • 日英対訳データセットの構築
    過去のIR資料から企業特有の表現を網羅したデータベースを構築。これにより、独自の「こだわり」をAIに学習させる基盤を整えました。

  • 専門用語・固有表現の学習
    一般的な翻訳エンジンでは再現できない、企業特有の文脈や専門用語を維持したまま自動翻訳を行うモデルを開発しました。

  • 1次原稿作成の自動化
    入力された日本語文章に対し、企業文化を反映した高品質な英語原稿を即座に出力するワークフローを確立しました。

成果

本システムの導入により、IR業務のスピードとコスト構造は劇的に改善されました。

まず、1次翻訳にかかる工数が従来の3〜5日から、わずか1日へと大幅に短縮されました。
これにより、資料開示までのリードタイムが短縮され、適時開示の質が向上しています。コスト面でも、外部委託費用を年間で数百万円単位で削減することに成功しました。

また、定量的な成果に留まらず、翻訳品質が一定の基準で均一化されたことで、チェック業務の負担も軽減。
社内に翻訳ナレッジが蓄積される体制が整い、属人化問題の解消と組織的なIR発信力の強化という大きな変革を成し遂げました。

まとめ・考察

本事例の特筆すべき点は、汎用的なAI翻訳をそのまま使うのではなく、企業の「歴史と固有表現」をデータとしてAIに吹き込んだ点にあります。
IR資料という、一言一句が投資判断に影響を与える繊細なドキュメントにおいて、実用レベルの品質を担保できたことは、生成AI活用の大きな前進です。

今後は、この日英対訳データベースをさらに拡張し、決算説明会でのQ&A対応や、サステナビリティレポートといった他の多言語発信業務へも横展開していくことが期待されます。
生成AIを「社内専用の翻訳パートナー」として育てるこの手法は、独自のブランド言語を持つあらゆる企業のDX指標となるでしょう。

AVILENが考えるAI変革とは

AVILENでは、AI変革を単発のAI導入や受託開発の積み上げではなく、企業の業務・意思決定・組織を段階的に変えていくプロセスと捉えています。
そのため、AI活用はいきなり大規模に進めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要だと考えています。

AI導入は「5つのステップ」で進める

AVILENでは、AI変革を以下の5ステップで整理しています。

  1. リテラシーをつける
    データ・AIの基本理解を揃え、技術の可能性と限界を正しく認識する

  2. ビジョンを描く
    AIを使って、どこで競争優位を作るのかを明確にする

  3. Quick Winを実現する
    短期間で成果が見えるテーマに絞り、成功体験をつくる

  4. 体制を構築する
    人材・組織・データ・システムを含めた推進体制を整える

  5. 活用範囲を拡大する
    PDCAを回しながら、AI活用を組織全体へ広げていく

AI変革を支える3つの考え方

この5ステップを進めるうえで、AVILENが大切にしている考え方は次の3点です。

  • コア部分から小さく始め、大きく広げる
  • 試しながら学ぶ、アジャイルなPDCA
  • 外部に頼りきらず、徐々に内製化していく
AIトランスフォーメーション(AIX)のポイントについて解説しています。

本事例の位置づけ

本記事で紹介する取り組みは、こうしたAI変革のプロセスの中で設計された一つの実践例です。
AVILENは、「AIを作る会社」ではなく、AIを使って企業の変革を前に進めるパートナーでありたいと考えています。

開催予定/配信中のウェビナー

AI変革で成果を出す企業は何を先に決めているのか?AI実装による人材紹介の高度化